参院選で浮上した「外国人政策」の論点 社会的共存に向けた課題とは

増加する移住と社会の共生構想

「支援のあり方について、『日本人学生とのバランスはどうあるべきか』『国内の人材育成と国際貢献をどう両立させるか』といった視点からの見直しが求められています」(教育政策研究者)

また、医療制度についても、「国民皆保険」の理念を維持しながら、短期滞在者を含む外国人への適用範囲や運用の透明性を再確認する動きが出ている。

「制度の“抜け穴”が意図せず利用されるような事例が報告されており、持続可能な社会保障制度を実現するためにも、国籍を問わず、制度の適正運用を目指す議論が必要です」(医療アナリスト)

近年、中国を含むアジア諸国の中間層や富裕層の間で、日本への移住志向が高まっているとされる。

法務省の統計では、在留中国人は2003年の約46万人から2024年には87万人と倍増し、来年には100万人に迫る見込みだ。

「背景には、日本の治安の良さや教育・医療水準の高さ、円安による不動産の相対的な割安感などがあると考えられます」(移民研究者)

このような傾向が続けば、都市部や観光地での住宅価格の上昇や地域社会との摩擦といった課題も想定される。

外国人政策や移民政策は、人口減少社会を迎えた日本にとって避けて通れない重要課題である。

だが、排除や恐怖ではなく、「共に生きる社会」をどう設計するかという視点での議論が不可欠だ。

政治的なスローガンやSNSの断片的な情報だけではなく、現場の声や国際比較を踏まえ、制度をどう整えていくか。そうした冷静な対話と検証こそが、今、日本社会に求められている。

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