多彩なおばんざいと濃い焼酎に酔いしれる 武蔵小山『やぎ』

多種多様なおばんざいに目移り必至だが、店主いわく「毎日来る人はいつも同じものを頼むね」。
武蔵小山の駅前が再開発の波に飲み込まれたのは数年前のこと。駅前にタマワンが林立し、一帯にあった飲み屋街は姿を消した。

だが、路地に入ればまだまだいい店が頑張っている。 その代表格が『やぎ』だ。

茨城県出身の八木さんが店を始めたのが43年前。その頃の武蔵小山はまだのどかだった。

こじんまりとした店内の大半を占めるのは、魅力的なコの字カウンターだ。このスタイルにした理由を聞くと、「一人の客がぽつんと寂しくならないようにさ」と豪快に笑う。
柔らかな豚バラを使ったショウガ焼き(800円)。ショウガのアクセントと火入れが絶妙。
カウンターの上に所狭しと並ぶ色とりどりの総菜は、朝から一人で仕込んだという。この作業をずっと続けてきた。
カボチャの煮物は優しい味。ムースーローは豚肉とキクラゲの卵とじ。フキの煮物も大人気(おばんざいは500円~)。
開店と同時に入ってきた常連に八木さんが「おかえり」と言うと、すかさず「ただいま」と返ってくる。客のほとんどは顔なじみだ。
おすすめ「俺のチャーハン」850円。激辛の青唐辛子を使ったチャーハン。注文後に唐辛子の本数を聞かれ、調理が始まると店内でみんながむせ返る。
ここの焼酎はやたら濃いからか、カウンター越しに見える常連の顔はみんな真っ赤だ。そしてテレビに映るプロ野球を見ながら歓声を上げる。その妙な一体感が心地よい。
チューハイ(450円)もとにかく濃い。ビールの中瓶は650円。
試合の続きが気になって焼酎のお代わりを頼む。そして皆で試合結果に一喜一憂する。それはなんとも懐かしい時間であった。
やぎ
東京都品川区小山4-4-16
03-3787-8756
営業時間:17時30分~24時
休み:日曜 

「週刊実話」2025年1月23日号より
※情報は取材当時のものです

撮影・文/キンマサタカ

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