伝説のサブカル誌を作った男の素顔 小説家・樋口毅宏氏が解き明かす「自分に寺島さんを嗤う資格があるだろうか」

『凡夫 寺島知裕。「BUBKA」を作った男』清談社Publico/1,800円(本体価格)
『凡夫 寺島知裕。「BUBKA」を作った男』著者:樋口毅宏(ひぐち・たけひろ)
1971年、東京都豊島区雑司ヶ谷生まれ。出版社に勤務した後、2009年『さらば雑司ヶ谷』(新潮社)で小説家デビュー。’11年『民宿雪国』(祥伝社)が山本周五郎賞と山田風太郎賞の候補作となり話題に。

「嫌われ者」がなぜ次々ヒット作飛ばすことができたのか?

――樋口さんがコアマガジンに関わるきっかけは?
樋口「四流大学しか出ておらず、アルバイトとしてどうにか潜り込むことができたエロ本出版社が、コアマガジンでした。
もっとも、入社後半年で警察から摘発を受けて上司が逮捕。担当していた雑誌が休刊に追い込まれて社内無職になった私を拾ってくれたのが、当時の寺島知裕編集長でした。
妻や恋人とのハメ撮りで構成される、いわゆるマニア誌に異動しました。読者が連れてくる妻を連れて人通りの多い場所で露出プレイなどを行いましたが、女性も恥ずかしがりながらも楽しんでくれました」

――タイトル「凡夫」になっている寺島知裕氏とは、どのような人物でしたか?
樋口「寺島さんは『BUBKA』をはじめとした、売れる雑誌をいくつも立ち上げた編集長でした。
しかし他人に対して躊躇なく嫌みを言ったり、恐ろしくケチだったりして、部下から嫌われていました。また、他人の成功を横取りするような側面もありました。
クセが強い編集者の中でも、『社内一の嫌われ者』と断言できます。
なのになぜ次々とヒット作を世に放つことができたのか。部下の暴走を止められず、運だけの人間が運から見放されたとき、どんな人生の末路が待ち受けているのか。書きながら苦しかったです」

女性にはパワハラとセクハラ

――特に部下の女性に対しては、異様な思い入れがあったようですね。
樋口「ついこの間まで聖女扱いしていたかと思いきや、数日後には『あんな女だとは思わなかった』とたたき落とす。
無視して社内にいづらくさせ、自発的な退職に追い込む。パワハラとセクハラの権化です。よくぞ2回も結婚できたと思います。
社内恋愛中の女性の部下に『アイツと別れたら俺と付き合え』と誓約書を書かせたり、会社の会長にはへいこらする一方、編集部では暴君でした」

――関係者を取材する中、最後は寺島氏の故郷を訪れました。
樋口「寺島さんを知る40人ぐらいの関係者から話を聞きました。
日本のタトゥー&ピアスの第一人者であるケロッピー前田さんが『小者だった』と寺島さんを一刀両断したのですが、果たして自分に寺島さんを嗤う資格があるだろうかと考えました。
自分の中にも同じような『寺島知裕』がいないか。私だけでなく、誰の中にも『寺島知裕』なるものがあるのではないか。
今、改めて振り返ってみると、人生の反面教師だったなと感じます」

聞き手/程原ケン

「週刊実話」7月17日号より

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