魚河岸出身の店主が選んだうまい魚とカツ煮が絶品 六郷土手『しなのや』

昼の書き入れ時が終わって賄いを食べるおかみさんとアルバイト店員さん
お世辞にも栄えているとはいえないが、六郷土手は昔ながらの下町気質を残した気持ちのいい街である。

魚河岸に勤めていた店主が店を開いたのが47年前のこと。

「長野県出身だからこの名前」

こういった素直なネーミングセンスの店が、昔はたくさんあったものだ。

看板メニューは刺し身だが、それ以外のつまみも人気だ。
刺し身3点盛り(1,350円)。この日はマグロ、カンパチ、タイ。魚河岸出身の店主の目利きは確かだ。
「評判がいいのはかつ煮だね。なぜかファンが多いんだ」
「かつ煮」750円。注文してから揚げるかつ煮はランチタイムでも人気メニュー。ビール大瓶は650円。
調理に時間はかかるが、こいつを頼んでビールをちびちび飲みながら到着を待つ、高揚感がいい。ようやく手元に届いた皿の上では、サクサクに揚がった衣が甘辛い汁をたっぷりと吸い、卵は黄金色に輝く。熱々を頬張り、口の中をやけどする前にビールで流し込む。

たしかにこれはうまい。少し冷めたら、熱かんと合わせてもよさそうだ。

厨房で黙々と働く店主。愛想のいい奥さんとのやりとりを見ていれば、長い間に築き上げた信頼が伝わってくる。
刺し身、串揚げ、焼き物、つまみなど多彩なメニューを夫婦の連携で作り出す。
昼も夜も客が途切れることがないのは、47年もの間、この街で真面目な商売を続けてきたからだ。
大ぶりのエビを使ったエビフライ(900円)。
店を出ても温かい気持ちが続いたのは、飲み過ぎたせいではないだろう。
しなのや
東京都大田区西六郷4-17
03-3739-4211
営業時間:11時30分~14時、17時~22時30分
休み:日、祝、第3土曜 

「週刊実話」2025年1月9・16日号より
※情報は取材当時のものです

撮影・文/キンマサタカ