北朝鮮でも米騒動勃発 国民がピンチの一方で「ロシア軍支援」の経済効果3兆円

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北朝鮮の金正恩総書記は、国民に再び涙の謝罪をしなければならないだろう。

昨年末以降、やや安定的に維持されてきた北朝鮮市場の穀物価格が約15%上昇傾向に転じ、歴代最高値を記録した。原因は北朝鮮が得意としてきた“コウモリ外交”の破綻だ。

「国内では豊作が伝えられ、ロシアから小麦も供給されているため、価格は安定、または値下がりしてもいいはずですが、正恩氏がウクライナ戦争への武器供給と派兵でロシアと蜜月関係を築いたことが裏目に出ました。
ロシアとの親密関係を快く思っていない中国からのコメ輸入量が、2023年の約28万トンから昨年には5万トンへと急減したのです」(北朝鮮ウォッチャー) 

コメの輸入量が激減したため、正恩政権は、ロシアからの小麦供給量の拡大を見越して、国民にしきりに“粉食”を奨励しているのだ。

いままで主食でなかった食物で腹を満たす国民は「欲しがりません。勝つまでは」「貧乏人は小麦粉を食え」に耐えられるのか。

戦死者遺族に平壌移住権を検討か

もっとも、その一方で気になるのは、北朝鮮がロシアへの武器供与と派兵でいくら得たのかだ。

韓国国防省傘下の韓国国防研究院は「ロシアへの軍事支援で得た経済効果は、総額で約28兆7000億ウォン(約3兆円)に上る」との推計を発表している。

弾薬や砲弾供与の割合が最も大きく約27兆4000億ウォン。それらは短距離弾道ミサイルや対戦車兵器、122ミリと152ミリの砲弾、240ミリ口径の放射砲などで、コンテナ2万1000個分を船舶で輸送したほか、列車や航空便でも搬出しているという。

だが、ロシア領クルスク州奪還作戦では犠牲者も多く、追加派兵を含めた1万5000人のうち死者約600人を含む約4700人の死傷者を出した。

そのため4月26日には、朝鮮労働党中央軍事委員会が朝鮮人民軍のロシア派兵を正式に認めたうえで、「戦闘の功績碑を建立する」との声明を発表した。

さらに5月6日付の英紙テレグラフは「ウクライナ戦争への派兵に対する不満が高まったため、北朝鮮の指導部が戦死者の遺族に『平壌移住権』を与えることを検討している」と報道。

多大な犠牲に対する国内の批判的世論を和らげるための措置、と分析している。

「正恩政権の真意は“口封じ”です。戦死者遺族を1カ所に集め監視下に置くことで、兵士の戦死状況やロシア軍のために戦った実態に関する噂の拡散を防ぐためでしょう」(前出・北朝鮮ウォッチャー)

北朝鮮はロシアとの親密度を深めているが、北朝鮮国民の空腹の足しにはならないのである。

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