金正恩総書記が大慌て 横転した北朝鮮最新鋭大型駆逐艦『崔賢』と海自『こんごう』の決定的な差

AIで生成したイメージ
今年5月、北朝鮮の日本海側にある清津市の清津造船所で行われた排出量5000トン級駆逐艦『崔賢』2号艦が進水式の際、水中に横転した。

おまけに、その無残な姿が世界に配信されてしまい、事故を直接見ていた金正恩総書記は「絶対に許せない深刻で重大な事故、犯罪行為である」と激怒した。

「北朝鮮はこれまでの50年間に排出量1000トン以上の軍艦をわずか6隻しか建造していません。
しかも、ほとんどは航海しておらず、ただドックで休んでいるだけですから造船技術は相当遅れています。
それだけに今回の『崔賢』2号艦は、正恩氏が北朝鮮の威信をかけて製造を指示したものだったのです」(軍事ライター)

北朝鮮当局によれば、『崔賢』2号艦は、海上自衛隊のイージス艦『こんごう』よりひと回り小さいものの、超音速巡航ミサイルや戦略巡航ミサイル、対空ミサイル、127ミリ艦上自動砲を搭載し、対艦戦術誘導兵器、艦上自動機関砲、電子障害砲などの機器を備えている。

ただし、これら兵器の発射実験は成功したとは伝えられていない。

「運用上の能力は、まず領海に侵入する敵を撃退する沿岸防御範囲を超える能力を備えているほか、主動的かつ攻勢的な防御システムを保有するなど新世代の高度技術を導入した攻撃、および防御型の複合システムを保有するなど先端技術満載の新鋭艦です。
今年は2021年1月の党大会で発表された『国防科学発展及び武器体系開発5カ年計画』の最終年で、同艦は最終年を飾る傑作になるはずでした」(北朝鮮ウォッチャー)

北朝鮮メディアは造船所の幹部を拘束したと報道

今回の事故の原因を前出の軍事ライターが解説する。

「『崔賢』1号艦の巡航ミサイル試射の際は、艦体が3~5度も傾いています。恐らく艦の重心が比較的上にあってバランスが悪いか、あるいは復元能力が足りないからではないか。
その原因は『崔賢』の垂直発射システム(ミサイルセル)にあるのでは。同艦ミサイルセルの数は74で、海上自衛隊の『こんごう』は90です。
数は『こんごう』の方が多いが、セルの面積部分は『崔賢』の方がはるかに大きい。これは船体が小さいにもかかわらず、多くのミサイルを搭載しているため艦体のバランスが悪いと思われます。
また、搭載ミサイルが過密ですから敵のミサイルが1発でも命中すれば、間違いなく他のミサイルに誘爆して、大爆発を起こし、沈没することになるでしょう」

横転した原因は、この艦の設計に問題があったということだが、その責任を問われた朝鮮労働党中央委員会軍需工業部のリ・ヒョンソン副部長が拘束された。

また、北朝鮮当局は、造船所の幹部3人も拘束したと北朝鮮国営メディアは報じている。

「『崔賢』2号艦横転の原因は“身の丈”に合った装備を指示しなかった正恩氏にもあります」(同)

軍需工業部副部長ら幹部を粛清したところで、解決できる問題ではない。

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