小沢一郎&中村喜四郎“選挙の達人”が仕掛ける政権奪取「虎の巻」

菅内閣発足1カ月。当初は歴代3位74%(読売新聞、9月19~20日)という高支持率でスタート、次の総選挙での比例投票先(同)も自民党55%に対し、新立憲民主党8%と大差をつけた。

だが、合流新党の影の立役者で共に「選挙の神様」と言われる小沢一郎氏と中村喜四郎元建設相の2人は「政権奪取は可能」と自信をのぞかせている。強気の背景を小沢氏側近が明かす。

「実は、小沢・中村の両氏は綿密に連絡をとりながら、3つのポイントをクリアすれば、必ず自公に勝てるというラインを引いている。それが今、ことごとくできる見通しになってきた」

3つのポイントとは何か。

「1つ目はカネ=軍資金ですよ」(同)

特に、小沢氏は立憲民主と国民民主の新党合流にこだわった。一時は「合流は無理」と指摘された時期もあったが、なんとか150人規模の新立憲民主党にこぎつけることができた。

「合流は各党候補者が乱立し、互いの票を食い合うのを防ぐ意味もあるが、それ以上に塊が大きくなり、政党助成金が倍近くになるのが大きい」(同)

選挙で勝つには、一定の軍資金が必要だ。立候補には、国に一定の資金を収める供託金が不可欠だからだ。

例えば、衆院選小選挙区立候補には1人300万円。旧民進党時代は公認候補者1人に最低1500万円を配布したほど。1億5000万円支給された河井案里陣営は別として、昨年行われ参院選で自民党が公認候補に振り込んだ金額もほぼ同額だ。

投票率10%増「ドブ板選挙」

「仮に次の総選挙に200人規模の候補者を擁立し、1人1500万円の軍資金を渡すと30億円。ほかに党運営資金を合わせると100億円のカネが必要だ。しかし、旧立憲は88人の国会議員で2019年の党決算は収入88億円。うち政党交付金36億円、借入金が25億円を占め、台所は火の車だった。これが合流新党で150人規模となり、政党交付金が倍の70~80億円になる。これで100億円確保のメドはついた。新党は今、衆院の過半数233を超える候補者擁立を模索しはじめている」(同)

2つ目は中村氏が説く「投票率10%アップ作戦」がジワジワ浸透していること。中村氏は自民党で建設相を務め、早くから将来の総理候補と目されていた。だが、1994年のゼネコン汚職事件で逮捕、自民党を離党する。ここから無所属で連続当選を重ね、当選は実に14回に及ぶ。中村氏が「無敗の男」「選挙の神様」と称される所以だ。

発案者は中村氏。140人の野党議員が参加し奔走している。この運動は投票率10%アップで新たに有権者1000万人を投票所へ向かわせようとする試み。

「野党議員が選挙区を丹念に回らないと、署名は集まらない。それが有権者と野党議員の距離を縮めることに繋がる。それが中村氏の最大の狙いです」(同)

選挙アナリストも同運動は「与野党逆転の引き金になる」と指摘する。

「2014年総選挙の投票率は53%、2017年も54%と低かった。多くの有権者が『投票しても政治は変わらない』の諦めの境地だった。これが棄権を生み、さらに野党乱立で票が分裂、安倍自民が圧勝した構図です。安倍政権時代、森友・加計学園疑惑に加え、予算466億円のアベノマスクや飲食業界の倒産続出など一連の政府のコロナ対応への不満はいまだに根強い。菅内閣でも日本学術会議委員任命拒否問題などの批判がある。政権交代が見込める解散総選挙なら投票率も高くなり、野党有利に向かうはず」

3つ目は共産党との連携。

「9月16日に召集された臨時国会での首班指名で、菅首相誕生以外に注目されたのが共産党です。共産党は実に22年ぶりに共産党委員長ではなく、枝野幸男と書いた。共産党が本気で政権奪取に協力する動きですよ」(前出・小沢氏側近)

共産票上積みで立民大逆転

実は、共産党との連携が有利に運ぶのは中村氏の選挙区である茨城7区の例を挙げれば分かりやすい。

「14戦無敗の中村が選挙に強いのは、両親が共に参院議員で『喜友会』という強固な後援会組織があるから。さらにもう1つ、公明党票が約2万票あったこと。しかし、次は立憲民主からの出馬だから、公明党の支援は期待できない。そこで共産党との共闘となるのです」(政治担当記者)

中村氏は今年の共産党大会に出席している。中村氏の選挙区から出馬していた共産党候補は次の総選挙は出馬を取り止め、中村氏支援にまわる方向だ。前回2017年総選挙の票数を見ると、中村氏の得票と自民候補の得票の差は1万5102票。共産党候補票は1万8308票だった。

「つまり、公明票2万票が消えても、共産票が中村氏に回れば自民に勝てるわけです」(同)

衆院の過半数は233議席。自民党は前回の選挙で284議席を獲得し、過半数を大きく上回り圧勝したが、うち80議席前後は公明党支援票の平均2万票によって当選できた議員という。

「小沢氏と中村氏、共産党の選対幹部らは、これを綿密に分析した結果、野党共闘に加え、共産党が持つ1選挙区平均2万票が加われば、前回選挙区で自民党が勝った50~70選挙区をひっくり返せる可能性が高いとし、与野党大逆転ができると弾いている」(同)