増加する中国人移住者にどう向き合うべきか? ジャーナリスト・舛友雄大氏「制度の点検が急務」

『潤日 日本へ大脱出する中国人富裕層を追う』東洋経済新報社/1,800円(本体価格)
『潤日 日本へ大脱出する中国人富裕層を追う』著者:舛友雄大(ますとも・たけひろ)
1985年、福岡県生まれ。中国・東南アジア専門ジャーナリスト。カリフォルニア大学国際関係修士。2010年に中国の経済メディアに入社後、日本を中心に国際報道を担当。’22年よりNHKラジオのニュース番組『マイあさ!』でアジア情勢の解説を担当。本書が初の著書。

なぜ中国人移住者が増えているのか?

――『潤日(ルンリィー)』は、中国人の日本移住を指すそうですね。なぜ日本なのでしょうか?
舛友「中国から脱出して先進国などに移り住む動きは、今や世界的なメガトレンドとなっています。
移住先としては、タイ、シンガポール、アメリカ、カナダなどが挙げられますが、中でも日本は特に人気を集めています。最大の理由は、コスパの良さです。
東京の生活の質は他の先進国と比べても高い。一方で、円安の影響もあり、物価は全体的に安い。欧米諸国と比べてインフレも穏やかで、よりお得に感じられるのです」

――実際に都心のタワーマンションを中国人が買いあさっているそうですね。
舛友「東京、大阪、福岡といった都市圏でここ数年に完成したタワーマンションでは、中国人を含む外国人購入者が全体の2〜4割を占めることが珍しくないです。
東京では港区や江東区などのタワーマンションで、中国語を耳にする機会が確実に増えています。中国の都市部では1、2億円程度を出せる人も少なくありません。
そういった人々が、私も潜入した地下銀行などを利用して送金し、キャッシュで購入しています」

「PTA幹部を務める中国人保護者も出てきている」

――その一方で、有名進学塾に子供を通わせる中国人も増えているとか。
舛友「有名進学塾に子供を通わせているのは『旧移民』層が中心ですが、最近では新移民の家庭でも、低学年から塾に通わせる動きが広がっています。
こうした家庭が、首都圏の中学受験に本格的に参入するようになってきました。有名中高一貫校では、PTAの幹部を務める中国人保護者も出てきているほどです。
社会保障が十分とは言えない中国では、教育こそが最大の『投資』と捉えられています。だからこそ、少子化で『空席』の目立つ日本が第2学区のようになってきました。
特に東京都文京区やさいたま市浦和区など、教育環境の整ったエリアに移住する中国人が増えています」

――増え続ける中国人移住者に対して、我々はどう向き合うべきですか?
舛友「日本経済に活力をもたらすとの見方もある一方で、不動産価格の高騰や、教育現場での中国人比率の上昇に対して、一部では反発の声も高まりつつあります。
国会では安全保障上の問題になるとの指摘も出ています。どのように、どこまで受け入れるのか。ビザをはじめとした制度が現状に対応できているのか。
一度立ち止まって、現場の声を聞きつつ、制度の点検を行うことが急務だと思います」

聞き手/程原ケン

「週刊実話」6月26日・7月3日号より

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