長澤まさみ『ドールハウス』は“アヤちゃん”の演技に注目「切なさと怖さが脳裏にこびりつく」

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【LiLiCoオススメ肉食シネマ 第312回】『ドールハウス』
5歳の娘・芽衣を亡くした鈴木佳恵(長澤まさみ)と夫の忠彦(瀬戸康史)。哀しみに暮れる佳恵は、骨董市で見つけた芽衣によく似た愛らしい人形をかわいがることで、元気を取り戻してゆく。
しかし、佳恵と忠彦の間に新たな娘・真衣が生まれると、2人は人形に心を向けなくなる。やがて、5歳になった真衣が人形と遊ぶようになると、一家の周りで奇妙な事が次々と起き始め、佳恵たちは人形を手放そうとするが、捨てるたびに戻ってくるように…。

「見てから数日間、眠れませんでした」

お仕事お疲れさまです。

夏はやはり怖い話。日本人は本当に好きね〜。でも、私も夏になると背筋がゾクっとするものが見たくなります。

今回出会った『ドールハウス』は、これまでに見た人形系の映画とは一味違いました。

近所の子どもたちが、かくれんぼするところから始まります。

長澤まさみさんと瀬戸康史さんが演じる鈴木夫妻の家。大人が出掛けるときは事故が起こらないよう、お風呂のお湯を抜くなど安全管理も完璧な両親。

しかし、帰って来ると5歳の娘・芽衣の姿がない。長澤さん演じる佳恵が、洗濯機を覗くと…説明せずとも何が起こったのか分かります。

この日から、夫婦の生活は一転。娘を亡くした悲しみから佳恵は暗くなり、生きる気力をなくす。夫の忠彦が支えるが2人の傷は深い。

そんなある日、骨董市場でガラスのケースに入った人形が佳恵の目に止まる。この子が鈴木家の“子ども”として暮らすことに。

亡くなったペットによく似たぬいぐるみに心癒やされる、そんな心情も理解できます。

ただ、これは日本の夏の映画。アヤと名付けられたその人形に、我が子のように髪を切ったり、爪を切ったりする佳恵。

時間が過ぎて鈴木夫妻に新しい命が誕生すると、そこから不可解なことが起こり始めます。

なんとなく…人形が生きてる感じがする。もう〜私はこれを見てから数日間、眠れませんでした。

長澤まさみ「アヤちゃんが一緒に演技をしてくれる」

うちの母がスウェーデンから送ってきた一体の人形がソファにいつも座ってますが、寝る前に10回は見に行きましたよ。

もちろん「そこに座ってるよね?」の確認。長澤さんも「アヤちゃんが一緒に演技をしてくれる」と仰っていたように、確かに表情があります。

人形の顔って基本的に左右対称で作られますが、アヤちゃんは人間のように少し違うように作られているので、撮影する角度によって変化を感じます。

どうやら、撮影現場ではアヤちゃんの演技にこだわりまくったらしい。

そして、もちろん映画ならではな演出で、怖さが増し増し!

私がこの映画の取材をしたとき、アヤちゃんの乱れた髪型を直すまで大人はみんな静かに見守っていました(笑)。それだけ重要な存在なのです。

私はシーツのシーンとビー玉のシーンで怖さマックス! でも、物語も良くて、かなり長く脳裏にこびりつく切なさと怖さ。さぁ〜日本の夏よ、来い!

ドールハウス
原案・脚本・監督:矢口史靖
出演:長澤まさみ、瀬戸康史、田中哲司、池村碧彩、本田都々花、今野浩喜、西田尚美、品川徹、安田顕、風吹ジュン
配給:東宝
6月13日(金)公開

「週刊実話」6月26日・7月3日号より

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LiLiCo(リリコ)

映画コメンテーター。ストックホルム出身、スウェーデン人の父と日本人の母を持つ。18歳で来日、1989年から芸能活動をスタート。TBS『王様のブランチ』、CX『ノンストップ』などにレギュラー出演。ほかにもラジオ、トークショー、声優などマルチに活躍中。