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『女子大生風俗嬢 性とコロナ貧困の告白』(宝島社/990円)~本好きのリビドー/昇天の1冊

『女子大生風俗嬢 性とコロナ貧困の告白』(宝島社/990円)~本好きのリビドー/昇天の1冊 
『女子大生風俗嬢 性とコロナ貧困の告白』(宝島社/990円) 

コロナ禍における貧困が社会問題となりつつある。特に女性の貧困は深刻で、先日も女性ホームレスが急増しているというニュースを見た。『女子大生風俗嬢 性とコロナ貧困の告白』(宝島社/990円)も、そうしたテーマを取り上げた1冊だ。

裕福とはいえない家庭の少女たちが、大学へ進学したはいいものの、学費や生活費に困り風俗で働く。コロナで、さらにその必要に迫られる。

普通のバイトでは卒業できないから、最終手段としてカラダを売る。倫理観が欠如しているという向きもあろうが、事はそう簡単に片づけられない。背景には日本社会全体が衰退したことによって、生活困窮者を救済できない政府の無能・無策ぶりがあると著者は指摘する。

究極のブラックバイト…

「ソープランドの個室でオンライン授業を受ける」「デリヘルとおっパブの掛け持ち」「16時間連続勤務」「お茶で1万円、食事で2万円のパパ活」など、目を覆わんばかりだ。究極のブラックバイトといっていい。だが、これも紛れもなく日本の実態なのである。

風俗バイトや援交は、尻軽女子が贅沢を欲してカネを稼ぐための手段という時代があった。だが、歴史をたどれば、カラダを売ることはそもそも貧困から発生していた。一周巡って、元に戻ってしまったのではないか…そんな印象を抱く。

著者はノンフィクションライターの中村淳彦氏。AV女優や風俗嬢などを丹念に取材した著作で知られるだけに、力の入ったルポとなっている。

(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)