社会

『島忠』買収の裏側ーコロナ特需のホームセンター業界が急ピッチで再編~企業経済深層レポート

「家庭菜園は従来、シニア層の定番でしたが、今年の巣ごもり需要で目立ったのは子育て世代です。今後もテレワークの浸透で、若い人のガーデニング需要は増えると期待できます」(同)

HC好調の理由を業界関係者が付け加える。

「コロナ禍が深刻化するとともに、今までのドラッグストア顧客が、マスクや除菌剤、ゴム手袋などの防菌グッズを求めて、HCにまで押しかけたことが、売り上げを後押した面もあります。また、感染防止のため、アクリル板やビニールシート、ビニールテープなどを求める客層も増えました」

HCは郊外を中心に、広い駐車場を持つ大型店が多いため、ソーシャルディスタンスを保ちやすい買い物ゾーンとしても注目を集めたようだ。

こうしてコロナ禍にもかかわらず追い風が吹き、一見すると絶好調のHC業界だが、先行きに大きな懸念も抱えている。

「巣ごもり需要で一時的に既存店の売り上げは伸びているが、市場規模は20年前から4兆円前後で横ばいのままです。その上、近年は1店舗あたりの販売力が落ちている。例えば、19年を見ると、消費増税前の駆け込み需要があった7~9月期を除いて、前年同期を下回っています」(前出・経営コンサルタント)

島忠など立て続けの買収は、競争激化での生き残り戦略

その理由を分析する。

「HC業界の伸張により、各社の新規出店攻勢が過熱し、一商圏に過剰とも言えるHCが進出して、1店舗あたりの売り上げが落ち込んだ。また、商品がかぶる他業界との競争も激化したうえ、ネット販売の攻勢もあり、弱肉強食、サバイバル競争が激化しているのです」(同)

つまり、HC業界は短期ではコロナ特需に沸いても、中長期的に見れば新手の生き残り策を考える必要性に迫られているのだ。そこで急浮上しているのが、M&A(企業の合併や買収)による業界再編だ。

DCMホールディングスは10月2日、業界7位の島忠に対して、1株あたり4200円のTOB(株式公開買い付け)を実施し、完全子会社化すると発表した。両社が合併すれば直近の売上高を単純合算しただけでも、5836億円となり業界トップに躍り出る。

近年、HC業界ではM&Aが相次いでおり、19年にはコーナン商事がLIXIL(リクシル)傘下の建材卸「建デポ」を約240億円で買収、今年2月にはドン・キホーテ系列の「ドイト」を買収した。さらに6月には、業界11位のアークランドサカモトが、同6位のLIXILビバを約1100億円で買収すると発表している。

「業界内で頻繁に買収が起こるのは、パイを大きくすることで他店と差別化しやすいPB(プライベートブランド)を強化できるからです。PB商品はCM料をカットできるほか、中間業者も入らない。高品質のものを低価格で提供できるため、消費者人気が高く、新たな顧客を呼び込めるのです」(前出・HC店長)

HC業界が生き残るには、生活の多様化と業界再編という大きな変化に対応し、その企業にしかない魅力を消費者にアピールしていくことが重要だ。

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