「早生まれ」だけが持つ武器“可塑性”を東北大学教授・瀧靖之氏が解説

『本当はすごい早生まれ』飛鳥新社/1,500円(本体価格)
『本当はすごい早生まれ』著者:瀧靖之(たき・やすゆき)
東北大学加齢医学研究所教授。医師。医学博士。1970年生まれ。東北大学大学院医学系研究科博士課程修了。東北大学スマート・エイジング学際重点研究センターセンター長。脳科学者としてテレビ、ラジオなど多数出演。

自己肯定感を損なわなければ早生まれの不利は9割解決

――「早生まれは不利」といわれますがなぜですか?
瀧「2020年に東京大学大学院の山口慎太郎教授が発表した論文は、『早生まれは不利』ということを裏付けるような内容で話題になりました。
『遅生まれの子供ほど成績が良い』『学年が上がれば学力の差は縮まるが、差は残る』『進学した高校の平均偏差値は、3月生まれは4月の遅生まれの子よりも4〜5ポイント低い』という部分が注目され、広まったのでしょう。
早生まれは1月1日~4月1日生まれまでを指しますから、4月1日は究極の早生まれといわれ、なんとか2日以降に産みたいと考えるお母さんもいらっしゃるようです」

――早生まれの不利は9割解決するとあります。どういうことでしょうか?
瀧「前述の論文には次のようなことも書いてあります。
『遅生まれの子供ほど《非認知能力》が高く、その傾向は学年が上がっても続く』『早生まれの子供は《先生や友達から認められていない》と感じていることが多く、対人関係の苦手意識が高い』。
実はこの非認知能力は、『学力に加えて、将来の成功に関わる』ということが研究で明らかになっています。
非認知スキルには、『統制性』『自制心』『自己効力感』という、『自己肯定感』につながる能力が含まれるため、裏を返せば『自己肯定感さえ損なわなければ、早生まれの不利は9割解決する』のです」

努力をすることで脳を変化させることができる

――「早生まれは受験で不利」なのでしょうか?
瀧「本書に掲載したデータでは、難関中学入学者は早生まれの割合が少ないのに対し、高校入学者はむしろ早生まれ率が伸長していました。
大学入学者の数字でも、早生まれはもはや不利とは言えない結果です。
早生まれは思春期ごろに爆発的に伸びる可能性があり、その時期を見定めれば受験で不利になることはありません。むしろ有利なタイミングもあると感じています」

――早生まれだけが持っている「武器」とは?
瀧「ずばり、『可塑性』です。これは『努力をすることで脳を変化させることができる』という性質があります。
可塑性は若ければ若いほど高いということが分かっています。早生まれの方は、同じ学年の他の方に比べて約1年、若い脳で刺激を受けています。
思考、判断、記憶などの脳に対する負荷を、周りの人よりも早い段階でしっかりかけていくということは、脳の可塑性という機能的な側面から見ればかなり大きなプラスなのです」

聞き手/程原ケン

「週刊実話」6月5日号より

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