有吉弘行が「最後のテレビ天下人」と称される理由

有吉弘行 (C)週刊実話Web
視聴者の嗜好変化が進む現代において、有吉弘行は「最後のテレビ天下人」として存在感を放っている。彼のキャリアは、バラエティーの黄金期を象徴するものであり、その多様な才能でテレビ界において唯一無二の地位を築いてきた。 

有吉は1990年代に『猿岩石』として一世を風靡。『進め!電波少年』(日本テレビ系)のヒッチハイク企画で大ブレイクし、一躍全国区の人気者となる。 

しかし、ブームが去ると仕事は激減し、一時は月収がゼロになるほどのどん底を経験したのは多くの人が知るところだろう。この挫折が彼のタレントとしての基盤を作る重要なターニングポイントとなった。 

“おしゃクソ事変”で注目を浴びる 

2000年代に入り、毒舌キャラとして再ブレイクを果たした有吉は、独特の皮肉を交えたトークで再び注目を集める。その後は『有吉の壁』(日本テレビ系)や『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日系)など、多くの冠番組を持ち、NHKから民放まで幅広く活躍。一時はゴールデン・プライム全曜日制覇の偉業を達成した。 

有吉が「最後の天下人」と称される背景にはいくつかの要因がある。 

まず、彼は多様なジャンルで活躍するマルチなタレントであることだ。料理、旅、トーク、リアクションなど、あらゆるフォーマットに対応できる柔軟性があり、地上波のバラエティー番組に欠かせない存在となっている。 

次に、彼の毒舌キャラと共感力がある。単なる辛辣なコメントだけでなく、視聴者や共演者の心情に寄り添う共感力も兼ね備えており、それが多くのファンを惹きつけている。さらに、時代を超えた存在感も特徴的だ。

若者は“底辺”時代の有吉を知らない? 

SNSや(冠番組の)YouTubeといった新しいメディアにも対応し、幅広い世代の視聴者を取り込むことに成功。一時はツイッター(現X)のフォロワー数で日本一だったこともある。 

 そして、彼が現在の地位を築く上で重要だったのが、ダウンタウンが長年支配してきたテレビ界の「笑いの隙間」を見事に塗った点であるだろう。 

ダウンタウンが築いた強烈なお笑い文化に対し、有吉は独自の毒舌と共感のバランスを武器に、その空白を埋める形でのし上がってきた。これは単なる後継者ではなく、異なるスタイルでテレビの王座に登り詰めた。 

その存在感を象徴する出来事として、2014年の『笑っていいとも!』(フジテレビ系)最終回の裏で『有吉反省会』(日本テレビ系)に出演し、2016年の『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)最終回の裏でも『有吉ゼミ』(日本テレビ系)に出演するなど、時代を象徴する節目の瞬間においても、常に自分のポジションを確保してきた点が挙げられる。

これらは単なる偶然ではなく、彼の戦略的なメディア対応能力の高いということだ。 

有吉と共に天下を取ったマツコ・デラックス 

2021年に有吉が夏目三久を結婚した際、マツコ・デラックスは『マツコ&有吉怒り新党』(テレビ朝日系)特番放送で、「一緒にしたら悪いけど、世の中にケンカ売るみたいにして復活して、私は地下から這い上がってきて…」「私みたいにずっとケンカ売り続けなきゃいけない人間もいていいけど、天下をとり、キレイな女房をもらい、幸せになることへの恐怖を和らげてくれた」とコメントしている。

テレビというメディアが大きく変わりつつある中で有吉は、唯一無二の存在として地位を確立している。彼のように、テレビ界でこれほど長期にわたり幅広く活躍できるタレントは、今後ますます貴重な存在となるだろう。

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