備蓄米を独占したJAが系列スーパーで大量販売? それでも消費者が買えない根本的事情

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備蓄米を放出したにもかかわらず、コメの価格上昇が止まらない。 

平均価格は15週連続値上がりで過去最高を更新し、江藤拓農水大臣は4月22日の会見で「備蓄米を出しても店頭価格が下がらない。責任を重く感じている。申し訳ない」と謝罪するに至った。 

農水省が備蓄米の初回入札を行なったのは、先月10~12日のこと。江藤大臣は4月18日の会見で、初回に放出した備蓄米14万2000トンのうち、JA(農協)グループの全国組織であるJA全農が約94%を落札したと公表している。 

2回の入札でも、全21万2132トンのうち、JA全農が約94%にあたる19万9270トンを落札。備蓄米のほとんどは、農協が買い占めているのだ。 

だが、JAから各地のスーパーへは、あまり行き届いていない。 

農水省の18日の発表によると、1回目の備蓄米のうち、3月中にJAから卸売業者に渡ったのは、落札した3%にも満たない2761トン。卸売業者から小売店に渡ったのは426トンと、0.3%にも満たない。 

放出しても流通しないのなら、価格上昇は当然だろう。一方で、備蓄米が多く入荷されているのが、全国約550店舗を展開するスーパー・Aコープだ。 

このAコープを運営するのがJAであり、現状では、“落札業者の系列に備蓄米が集中している”のだ。 

「ならばAコープの店頭に行こう」と米を買いに行っても、そうことはうまくいかない。 

10店舗一斉閉店で姿を消した地域も…原因は殿様商売か?

実はAコープ、近年は続々と姿を消しており、今年2月には岐阜県の10店舗が一斉閉店。JAひだの説明によると、過去10年間で売上は44%減少、2022年度の事業利益は約1億5900万円の赤字と、苦しい状況が続いていた。

今年でいうと、神奈川県の伊勢原高森店、群馬県の新田店も閉店。石破首相の地元・鳥取県も、昨年3月にトピア店が閉店し、これで県内から全てのJA系スーパーが撤退した。

同年には入間店(埼玉県)、汐見台店(神奈川県)、柳川店(福岡県)も閉店しており、全国的に撤退しつつあるのだ。

しかし、入間店には4月10日から業務スーパーが営業開始したほか、一斉閉店した岐阜県の店舗も、地元のスーパーが事業継承している。スーパー需要は強い地域だが、“Aコープに需要がない”ことがうかがえる。

この不人気の主な要因に考えられるのが“価格”だ。農家を保護したい一心か、Aコープは他のチェーンより割高な価格設定が多く、ソーシャルメディアで酷評されている。

現状、Aコープは「人気がない上に、備蓄米を独占するような商売で反感も買っている」という最悪の状況にある。

一方で、コメ卸大手の木徳神糧は4月21日、2025年12月期の連結業績予想を上方修正。純利益を従来の18億円から28億円に引き上げた。これは過去最高益を更新する見通しだという。

業績を押し上げたのは、2024年産米の品不足で価格高騰が続いたこと。売上高も100億円増の1650億円として、過去最高となる見通しになるようだ。

23日には3回目の備蓄米入札が行われたが、こちらはきちんと市場に流通するのか。

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