資金ショート回避のコード、企業再建のロード 企業再生コンサル・矢木豊彦氏が語る逆転モード

◆『これまで誰も書かなかった 資金繰りに悩む経営者への提言』 矢木豊彦 教育報道出版/2,000円(本体価格)
著者:矢木豊彦(やぎ・とよひこ)
1953年、東京都生まれ。中央大学法学部卒業後、某大手企業に16年間在籍。退社後、同僚と3人でバイオ事業を立ち上げたが失敗、自宅を含めたすべての資産を失う。その後、セントラル総合研究所で事業再生を学んで独立。『J&T パートナーズ株式会社』を設立した。

「資金が詰まってしまうと打てる手立てが限られてしまう」

――経営コンサルタント業の中でも、経営難の企業を救う「事業再生支援」に力を入れていますね。
矢木「そうです。私の場合、依頼のあった企業の最近の資金繰りの実績と今後の予測から『緊急度』をまず判断します。資金が詰まってしまうと打てる手立てが限られてしまうからです。
法律に助けを求めた場合、会社は存続しても自分の会社は他人の手に渡り、取引先にも金銭的に迷惑をかけることになります。また、銀行に対する『代表者としての個人補償』があれば、個人の資産もすべて失うことになるので、法律には頼らない『自力再生』を基本にしています」

――具体的な方法を教えてください。
矢木「まずは資金繰りが詰まることがないようにする。会社がかなり厳しい状況では融資を受けることは難しいでしょうから、借入返済の『リスケジュール』を銀行にお願いします。それでも資金がショートする恐れがあれば、『銀行の返済を止める』こともあります。社員の給料や取引先に対する支払いが滞る状況では事業の継続は不可能です。
それよりは銀行の返済を止める方が生き残れる可能性が高いということです。『利益は出ているが返済できる余力がない』という状況であれば、とりあえずこれで資金繰りが詰まる状況は回避できます。その上で事業にメスを入れていきます」

――銀行とはどのように付き合っていけばよい?
矢木「銀行に対しては必要以上に気を遣ったり、恐れる必要はありません。銀行から融資を受ける場合、その用途や返済余力や資産状況で融資の可否が決まりますが、それを踏まえて『担当者が通せる稟議書が書けるかどうか』です。
資金繰りが苦しいという理由だけでは融資は通りません。借り入れができなくなることを恐れ資金繰りが厳しいのに無理な返済を継続するのも愚の骨頂です。きちんとした返済計画を示し、いったん返済を待ってもらったりすることが重要です」

――黒字体質の経営基盤を作るコツは?
矢木「経営者は常に毎月の会社の入金と出金のバランスに気を配り、変化にはすぐ対応することが大切。入金の方が出金よりも少ない場合は、特に早い対応が必要です。
同様にお客様や取引先が必要としている商品やサービスがどう変化しているかを常に捉えて行動することも重要。DXやAIで目まぐるしく状況の変わる激動の時代に、柔軟に対応できるかがカギですね」

聞き手/程原ケン

「週刊実話」5月8・15日号より

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