朝5時から飲める労働者のオアシス 大森『区民酒場』

一番人気のから揚げ(600円)。こんがりと色づいた衣の香ばしさで酒が進む。
平和島は男の街だ。青果市場、物流センター、新幹線の車両基地で夜通し、または早朝から働き続ける男たちがいる。彼らの安息の地が『区民酒場』である。

店は2部制でオープンはなんと朝5時。8時ともなれば夜勤明けの客が座席を埋め尽くす。夕方になると今度はボートレース帰りの客たちが集まり始める。
近所の学食や仕出し、おにぎりやお弁当のテイクアウト販売も行っている。
「スーパーで総菜を買って独りで飲むのは味気ないし、家で料理を作るより安い」

そう言って笑うのは市場で働くという男性客。がっしりとした体格の彼は4リットル焼酎のペットボトルを大事そうに抱えながら飲んでいるが、ボトルの値段やシステムは店のどこにも書かれていない。
せんべろセットとつまみ一つでサク飲みも。
不思議に思ってマスターに聞くと、「彼はたくさん飲んでくれるからいいの」とニヤリ。なんだか懐かしい。こういったおおらかさが昔はどこの酒場にもあったはずだ。
豆腐を一丁使った冷ややっこが150円。チューハイは380円。
朝早くからグラスを傾けていた男性は、帰宅してひと眠りした後、深夜の仕事に向かうという。

夕方になれば、仕事を終えたサラリーマンが愚痴を言いながらジョッキを乾かす。そのどちらも私たちの社会を支える大事な一員である。
紅しょうが入り玉子焼き(500円)。明太子も選べる。
昼と夜、それぞれの人生が交差する区民酒場。なんともいい店名ではないか。
『区民酒場』
東京都大田区大森本町2-31-5
03-6459-6636
営業時間5時~13時(1部)、17時~21時(2部)
※日曜が祝日の場合は1部のみ4時~11時で営業 
休み:日・祝 

撮影・文/キンマサタカ
「週刊実話」2024年12月19日号より