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日本全国☆釣り行脚~『ガザミ』~宮城県女川町/女川港産

日本全国☆釣り行脚~『ガザミ』~宮城県女川町/女川港産
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web 

年を取ると時間の流れが早いもので、暦は早くも6月を迎えようとしております。正月休みはついこの間だった気がするんですけどねぇ…。

冬場は寒さが厳しい東北の海も、ようやく春の訪れが実感できるようになってきました。少しずつ水が温むにつれ、魚の動きも活発になり、カレイやアイナメを釣るのによい季節です。

「そろそろカレイが面白くなってきたよ~」

頃合いかと思っていたタイミングで親戚の子どもから誘いがかかり、宮城県牡鹿郡の女川港へ出かけました。大きな入り江の最奥部に位置して常に波穏やかな天然の良港であり、古くからサンマやカツオの水揚げ地として栄えてきました。今の季節は周囲の山々が新緑に包まれ、美しい景色を堪能しながら竿が出せます。

よく「釣れなければ釣りじゃない」などと言う人もいますが、釣果の有無はあくまで結果。自然を相手にのんびりと1日がすごせれば、それでよし。それも釣りの楽しみ方ではないかと思います。

のんびりと出かけて正午すぎに女川港へ到着。休日の好天とあって、よさそうなポイントはそれなりに賑わっておりました。せっかくの休日、釣りに来てまで窮屈な思いをするのは本末転倒、比較的空いている港奥の岸壁に釣り座を構えることにします。この時期のマコガレイは産卵を終えて食欲旺盛。エサとなる小動物が豊富な浅場まで入り込みますから、港奥でも期待は十分です。

待望の獲物は脚がワラワラ!?

持参した数本の安物竿にそれぞれカレイ用の仕掛けを結び、エサのアオイソメをハリにたっぷりと付けて投げ込みます。

マコガレイは「お食事タイム」がハッキリしている魚ですから、仕掛けを入れたらあとは魚が掛かるのを待つだけ。時折、エサの点検をする以外にすることはなく、ジ~ッとただひたすらにアタリを待ちます。〝食わぬなら食うまで待とうマコガレイ〟の心持ちが大事です。

まぁ、極めてヒマにはなりますが、緑萌える山々や穏やかな水面を眺めていれば飽きることはありません。

食わぬなら…。

食うまで待とう…。

待とう、待とう…。

え~っと、気がつけば夕方になりましたけど…。お留守なのかしら?

「やっと掛かったかも~」

あたりが薄暗くなってきたころ、隣で黙々と竿を出していた親戚の子どもが声を上げました。

「諦めない心が大事なんだよ~」

自分が半ば諦めかけていことは伏せつつ偉そうなことを言い、浮かんでくる獲物の正体を確かめようと水面をヘッドライトで照らします。ユラユラ~ッと茶色い背中が見えてくる瞬間が、この釣りのハイライトですからね。

しかし、やがて見えてきたのは白っぽい影…。しかも脚らしき数本がワラワラと蠢いております。

内子もドッサリ! シメは甲羅酒♪

「カシャッ!」

何とも機械的な音を立てて岸壁へと引き上げられたのは、〝渡り蟹〟として知られるガザミでした。

カレイ釣りではシャコやトゲクリガニといった、甲殻類が掛かることは珍しくありませんが、そのなかでもコイツは別格。まして今回は型のよいメスですから、上物中の上物です。

「なぁ~んだ、魚ですらないじゃ~ん」

オトナのプライドで羨ましさを隠しつつ一笑に付しましたが、その虚勢は次の一言で崩壊しました。

「コレ、旨いからオジサンが持っていきなよ」

えっ、イイの~♪

こうなるとオトナのプライドなど何処へやらで、素早く自分のバケツにしまい込みました。労せずして晩酌の肴を確保です。ありがたや~、ありがたや~。やっぱりお土産を持ち帰れるって大事ですな。

持ち帰ったガザミはシンプルに蒸し蟹にしていただきます。真っ赤になった甲羅をパカッと開けると鮮やかなオレンジ色の内子がみっちり♪ 蟹味噌に絡めつつ内子をつまむと…旨っ! 濃厚でコクのある風味が口の中に広がります。続いて脚を折って根元の身をしゃぶると、これまた旨っ!

締めは甲羅に『墨廼江』を注いで甲羅酒を堪能。ミソ、内子、身のすべてが溶け込んだ酒は激烈にヤバい代物で、あっという間に昇天となりました。

三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。

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