マグロ漁船に求められる働き方改革 元漁船員(27)が語る実態「昔気質の漁師が多いからパワハラは日常茶飯事」

画像はAIで生成したイメージ
「借金したらマグロ漁船」という話は、もはや昭和の都市伝説だ。今や遠洋漁業に新卒の若者らの志願者が殺到している。

だが、その一方で離職率の高さから、現場での「働き方改革」が求められているという。

水産庁が発表した2022年の漁業就業者の平均年齢は56.4歳で、65歳以上が37.7%、39歳以下は19.3%と高齢化が進んでいる。

若い世代の人材確保のためか、ネット上には遠洋漁業就労者は“20代で年収1000万円”など高収入をクローズアップした情報が飛び交い、若者の注目が高まっているという。
 
「高収入を目的に若者の志願者は急増し、採用も増えていますが、数年後に何人残るかです。大型船舶に必要な海技士資格を取る前に辞めてしまう若者が実に多い。離職の理由は就労環境です」(漁業ライター)

全国漁業就業者確保育成センターの調査によると、遠洋マグロ漁業の航海期間は約10カ月。会社によって就業体制は違うが、操業中の1日の労働時間は10時間、13時間、8~12時間の交代制、3交代制の投網当番(6時間)、揚縄当番(12時間)などとなっている。

「結局1年持ちませんでした」過酷な現場が浮き彫りに

給与水準については、入社数年目までの年収は350万~600万円(同センター調べ)と比較的高給だ。

しかし、遠洋漁業で働いていた都内飲食店アルバイトの男性(27)はこう語る。

「学生時代、テレビのドキュメンタリー番組を見てマグロ漁師に憧れていました。たまたまネット検索していたら遠洋漁業の求人情報が目に留まった。年収も良い。試しに応募するとトントン拍子で採用が決まりました。
しかし、遠洋マグロ漁に出港すると就労時間は不規則でハード、プライバシーも確保されていない。何より昔気質の漁師が多いから、パワハラは日常茶飯事でした。海技士資格を取るまでは絶対辞めないつもりでしたが、結局、1年持ちませんでしたね」

もっとも、遠洋漁業会社側も若手乗組員に対する労働環境や指導方法の改善策に取り組んではいるが、離職率に歯止めを掛ける“波高し”なのだ。

「週刊実話」5月1日号より

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