60年以上の歴史を持つ“大人の酒場” 笹塚『やきとり井口』

店主のタン好きが高じてメニュー入りした「ゆでタン」(550円)はスープまでペロリ。合わせるのはチューハイ(400円)。
日本有数の繁華街・新宿から電車で5分。笹塚の駅前はにぎやかだが、少し離れるとあっという間に閑静な住宅街が広がる。

駅から5分ほど歩くと、60年以上前からこの地で営業を続ける『やきとり井口』が見えてきた。知り合いに紹介されて足を運んだが、ふらっと歩いてこの店にたどり着くのは難しそうだ。

のれんをくぐると左手に焼き台がある。テイクアウトにも対応していて、地元の人が焼き鳥やモツ焼きを求めている。店に着いた夕暮れ時は大忙しだった。
3代目の店主の他はお母さんがカウンターに、奥さんが焼き場に立つ。
開店時刻を過ぎポツポツと常連客がやって来る。まだ蒸し暑い日だったから、店のドアは開けっ放しで、皆が黙って席に着き、静かにグラスを傾ける。これぞ大人の酒場である。 

「ここは何を食べてもおいしいよ」そう声を掛けてくれた常連客は高名な研究者であると店主が教えてくれた。もう一人の客は祭りの話で盛り上がっている。 

カウンターに座る常連たちに、自分の姿を重ねる。先ほどのセンセイは酒を何本か空けた後、サッと会計を済ませ帰っていった。いやあ渋い。 

店主が考案した自家製ラーメン(750円)はもはや専門店の味わい。塩やしょうゆ、豆乳などスープも複数あり締めにピッタリ。
かくいう私は飲み足りず「おかわり」の声を何度も上げてしまう。こういう店の常連になるには、まだまだ修行が足りないと思った。
やきとり井口
東京都世田谷区北沢5-20-11メイゾン井口1F
03-3466-9783
営業時間:17時~23時
休み:月曜

撮影・文/キンマサタカ
「週刊実話」2024年12月5・12日合併号より