トランプ米大統領の話術はプロレスのマイクパフォーマンスがベース? 蝶野正洋が指摘「敵に回すとやっかい」

蝶野正洋(C)週刊実話Web
アメリカのトランプ大統領のパフォーマンスがエスカレートしている。

報道カメラの前で展開したウクライナ・ゼレンスキー大統領との舌戦は、世界に衝撃を与え、ロシアの侵攻を受けているウクライナ情勢を一変させるほどの影響をもたらした。

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でも、あれこそがまさにトランプ大統領のやり口なんだよ。

自分たちの主張を大げさに膨らませて、センセーショナルに問題に切り込み、相手を挑発して話を決裂させて、結論を先送りにする。

そして世論の反応を見ながら条件を小出しにして、有利な状況を勝ち取っていくんだよ。

ケンカというのは内容よりも、最終的にどっちが頭を下げたかで勝ち負けの印象が決まる。

トランプ大統領陣営が示したかったのは、まさにそこだ。

結果的に最初の条件とあまり内容が変わっていなかったとしても、ゼレンスキー大統領が譲歩して、トランプ大統領が難しい交渉をまとめたという印象になるんだよ。

こうしたトランプ大統領の戦略は、プロレスのマイクパフォーマンスがベースになってるんじゃないかな。

自分勝手な主張でも、マイクを取ってうまくアピールして観客を味方につければ、相手は要求を飲むしかなくなるからな。

実際にトランプ大統領はWWEのリングに上がって、大観衆を前にマイクパフォーマンスをしたことがあるから、そのくらいはお手の物だろう。

ゼレンスキー大統領はもともと俳優だけど、台本がないとダメなタイプみたいだから、ああいう舞台だと手玉に取られてしまう。

俺が思うマイクパフォーマンスのコツは、事前に考えすぎないこと。主張したいことを1つに絞っておいて、場面によって喋ることを変えるんだよ。

あと、なんでもかんでもデカいことを言えばいいんじゃなくて、吹いてはいけない場面をしっかり見極める。

時には10のところをあえて6〜7ぐらいの話で抑えたほうが、いい場合もあるんだよ。

トランプ陣営は乱暴に見えて緻密

こういうテクニックは、リング上のマイクパフォーマンス以外でも使える場面が多い。

例えば講演会だ。

俺が講演会に呼ばれたときは、喋る前にまず客層を見る。

お客さんが50代より上の世代が多いと思ったら、昭和・平成のプロレス話をするといい反応が返ってくる。

若い世代が多い場合は、昔のプロレスの話をしても分からないことが多い。

だから、ガキ使の特番『絶対に笑ってはいけない』シリーズでのビンタにまつわるエピソードを披露するんだよ。

つまんない講演会というのは、話したいことを事前に組み立てて、それを順番に喋っていくだけのパターンが多い。

観客のほうを向かずに、自分の喋りたいことを勝手に喋ってるだけだから、それは相手の心に届かない。

まずは場を読んだ話で観客の心をつかみ、話を聞いてもらえる状況を作らないとダメなんだよ。

トランプ大統領は国内で自分の利益を最優先し、敵対する組織をどんどん削っていっているが、これも状況を作るという戦略なんだよ。

2度目の大統領だから、誰を追い落として、どこに味方を置けば自分たちのやりたいようにできるのか、はっきり分かっているんだろう。

トランプ陣営は乱暴に見えて緻密に進めているから、敵に回すとやっかいだと思うよ。

「週刊実話」4月10日号より

蝶野正洋(ちょうの・まさひろ)

1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。