グローバル資本主義が崩壊! 世界中で“限界寸前”の4つの問題点【森永卓郎さん特別寄稿2】

森永卓郎 (C)週刊実話Web
「グレートリセット」の後、世界の経済社会ではグローバル資本主義と真逆のことが起きる──。

「モリタク」の愛称で親しまれた経済アナリスト、故・森永卓郎さんが残した“2025年の大予言”とは…。(全4回の2回目)

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私が2025年に大転換が起きるだろうと考えるもう一つの根拠は、カール・マルクスの予言だ。

いまから150年も前に、マルクスも資本主義が行き詰ることを予見していた。

その理由は(1)許容できないほどの格差、(2)地球環境の破壊、(3)少子化の進展、(4)ブルシットジョブ(くそどうでもいい仕事)の蔓延で、いずれの問題も、すでに世界は限界寸前のところまで来ている。

150年前のカール・マルクスの予言

(1)許容できないほどの格差
国際NGOの「オックスファム・インターナショナル」は、2019年1月に「世界で最も裕福な26人の資産の合計が、所得の低い38億人(世界人口の半数)の資産合計とほぼ同じ」とする報告書を発表している。

また、2024年1月には「世界で最も裕福な5人」の資産が2020年以降、4050億ドル(約59兆円)から8690億ドル(約126兆円)へと約2.1倍に増加した一方で、世界人口の6割を占める貧困層約48億人の資産が0.2%減少したと発表した。

片手で数えられる超富裕層が資産を独占するほど、極端な格差が永続できるとは誰も思わないだろう。

(2)地球環境の破壊
国連傘下の世界気象機関(WMO)は2023年5月に、世界の年間平均気温が23~27年の5年間で、産業革命前と比べ1.5度以上高くなる確率が66%という予測を公表した。

地球温暖化防止の国際的な枠組みであるパリ協定は、今世紀末の気温上昇を1.5度以内に抑える目標を掲げている。

そうしないと地球が壊れるからだ。

つまり、今後5年以内に3分の2の確率で、地球が壊れるということだ。

実際、世界各国を襲う熱波、台風、干ばつ、洪水など、温暖化に伴う自然災害は凶暴化しており、日本でも数十年に一度と言われた大雨特別警報が毎年のように発出されるなど、国民生活が危機にさらされている。

地球温暖化対策は、待ったなしの状況になっている。

米国の富裕層は、仕事もレジャーもちょっとした買い物も、プライベートジェットで出かける。

そんなことを許していたら、地球環境は守れないのだ。

(3)少子化の進展
少子化も、先進国でほぼ共通して進んでいる。

2023年における日本の出生数は73万人と、前年より4万人も減少した。

マルクスは少子化が進む原因として、資本家は労働者が翌日も再び働けるだけの賃金は支払うが、労働者が結婚し、子育てができるレベルの賃金は支払わないからだとしている。

いまの日本でも平均年収170万円の非正社員には、結婚の機会そのものがほとんどない。

このまま格差の拡大を容認していたら、日本が少子化で消えていってしまうのだ。

(4)ブルシットジョブ
ブルシットジョブも蔓延している。

分かりやすい事例は倉庫でのピッキング作業だ。

担当するアルバイトは、ハンディー端末を持たされ、画面に表示されるコンピュータの指示にもとづいて、倉庫の棚から商品を探し出し、出荷の窓口に持っていく。

そのピッキングのたびに、「締め切り時間まであと何秒」という表示が出る。

この制限時間内にピッキング作業が終わらないと自動的にカウントされ、成績が悪いアルバイトは、帰り際にスーパーバイザーから厳しく叱責される。

人がコンピュータを使うのではなく、コンピュータに人が使われる。

人間はマニュアルに従って体力の限界まで働くだけの存在になって、そこには働くことの喜びは存在しない。

そんな働き方に疑問を持つ若者は、確実に増えてきている。

1979年に英国のマーガレット・サッチャー元首相が始めた「グローバル資本主義」は、いまや完全に限界を迎え、崩壊の危機に直面しているのだ。

週刊実話増刊1月29日号『検証 2025年の大予言』(小社刊)より