時間の感覚を伸ばし『マトリックス』の世界へ…“もう一つの人生”を半永久的に楽しめる可能性【不老不死の研究最前線2】



現実世界とは隔離された仮想世界で生きる

永遠の命に近いものを得る方法として、また別の可能性を追求している研究者もいる。

それは、生物学的な永遠の命ではなく、感覚として限りなく永遠に近い体験をすること、つまり人間が感じる主観的な時間を伸ばし、現実よりも膨大な長さに変えてしまおうというアプローチである。

「楽しい時間はあっという間に過ぎるのに、退屈な時間や苦しい時間はとてつもなく長く感じるものです。これは『時間の感覚』が、視覚や聴覚といったほかの感覚とは異なるからです。脳は感覚器官から多くの情報を受け取ると、意味をなすように整理をする。われわれが時間の感覚だと思っているものは、脳の判断に従って特定の形に整理された2次的な情報にすぎないのです」(脳科学者)

自動車事故の瞬間や高所から落下している最中など、人間は命に関わる事態が起きたとき、わずか数秒の出来事をスローモーションのように感じることがあるという。

この実際に流れている時間とは違う、脳の判断によるもう一つの時間を利用すれば、現実には数時間、数日の出来事を体感的に数十年、数百年にすることができるのだ。

ある意味では、永遠の命に近づいたともいえるだろう。

映画『マトリックス』ではないが、眠っている間の時間を体感的に、永遠に近いほどの長さに変えてしまうことは、いまだ未知の部分が多いデジタル不死よりも、現実的であると考える研究者もいる。

もちろん、その際にはただ眠っているだけではなく、これもまさに『マトリックス』のように、夢の中であっても現実のように過ごせなければ意味がない。

最近は夢をハッキングする研究も進んでおり、将来的には自身が事前に望んだ「楽しい仮想世界の舞台」の中で、現実世界に引き戻されることなく、半永久的にもう一つの人生を楽しめるようになるかもしれない。

果たして、人類が古代より夢みた永遠の命、不老不死は、いかなる方法で実現するのだろうか。

『検証 2025年の大予言』(小社刊)より