まるで恋愛映画! 本当にあった「50年後に実った恋」離れ離れになった“初恋の人”と運命の再会



神のご加護で奇跡の再会

「僕が会社の慰安旅行でとある神社に立ち寄った時のことです。商売繁盛のお祓いを受けるために社務所で手続きをしていたら、そこに幸子が御朱印をもらいに来たんです。隣に並んでいた幸子は、何気なく私の書いた書類の名前を見て『え!?』と私の顔を覗き込みました。何事かと一瞬戸惑いましたが『●●ちゃん?』と子供の頃のあだ名を呼ばれて幸子だと気づきました。この時の衝撃はとても言葉では言い表せません」

阿部さんが感無量といった表情で傍らにいる幸子さんを見つめると、幸子さんも黙ってうなずいた。

50年ぶりの再会を果たした2人はその後、会えなかった時間を取り戻すかのように急激に関係を深め、3カ月後に入籍している。

「本当ならあと50年は一緒にいたいところですが、さすがにそれは無理じゃないですか。余生というと大げさですけど、これからは1分1秒でも幸子との時間を無駄にしたくないと思ったので、会社は信頼のできる部下に任せることにして半リタイア生活に入りました。幸い、死ぬまで食べていけるだけの蓄えもあります。仕事しかない人生を寂しく思ったこともありますが、この仕事をしていたからこそ幸子と再会できたんだと今は感謝しているくらいです」

「私は1人で生きると決めた時に健康に気をつけるようになり、足腰を鍛えるために出歩く生活の中で御朱印集めを始めたんです。特に信心深いわけでもない私が神社巡りをすることになったのも、努さんと再会するためだったと思えば納得できます」(幸子さん)

まるでドラマか映画のような話だが、これは紛れもない事実であり、現実の「ハッピーエンド」はまだ続いている。

取材・文/清水芽々

清水芽々(しみず・めめ)

1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。