違法ドラッグにハマり一家離散!“薬物サバイバー夫婦”が見た「地獄」と「幸福」



家族4人がバラバラの生活

子供たちが学齢期になる頃には身も心も中毒者になっていたという夫婦は、子供の世話もままならずにネグレクト状態。身なりや行動から「適正な養育をされていない」と感じた学校側が児童相談所に通報したことから、家庭の実態が明らかになり、夫婦の薬物中毒が発覚する。

薬物の使用歴はすでに10年以上にわたっていたという。

子供たちはすぐに児童養護施設に送られ、夫婦は別々の施設に収容された。

「薬が抜けるまでは個室で隔離されましたが、あの時の禁断症状のすさまじさは言葉にできないほどです。夫も錯乱状態になり、舌を噛み切って死のうとしたそうです」

養護施設にいた子供たちも、別々の親戚に引き取られることになり、家族4人バラバラの生活が始まった。

「私は3年で施設を退院し、その後はNPO団体のお世話になりながら工場で働いていました。5年目に退院した夫は知人の紹介で、出稼ぎのような感じで全国の現場を渡り歩いていました。私も夫も弁護士さんを通じて、子供たちと手紙のやりとりはしていましたが、会うことはかないませんでした。所在がまず分かりませんでしたし、仮に分かったとしても、こちらから連絡を取ることは禁止されていたので待つしかなかったんです」

そして一昨年の秋に家族4人の再会が果たされた。

「息子と娘はもっと前から連絡を取り合っていたようです。2人共、預けられた親戚宅では冷遇されていたようで、高校卒業と同時に就職して独立していました」

失われた10年間という時間を取り戻すかのように、お互いの家を行き来しながら交流を持っていた一家だったが、「両親に、安心して暮らせる場所を作ってあげたい」と考えた子供たちが夫婦にプレゼントしたのが冒頭の物件である。

「有難いというより、もったいない、申し訳ないという気持ちですね。せっかくなので今は息子と娘も一緒に暮らしてもらっていますが、息子も娘もいずれ結婚してこの家を出て行くと思うので、それまで目いっぱい愛情をかけるつもりです」

一家は近隣住民から「仲睦まじい家族」として評判になっているという。

取材・文/清水芽々

清水芽々(しみず・めめ)

1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。