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レポート『コロナと性風俗』第11回「上野・御徒町」~ノンフィクション作家・八木澤高明

レポート『コロナと性風俗』第11回「上野・御徒町」~ノンフィクション作家・八木澤高明 
レポート『コロナと性風俗』(画像)AlexSmith / shutterstock

三度目の緊急事態宣言が出された直後、東京の上野界隈に向かった。まずは目抜き通りのアメ横を歩いた。

1年以上前であれば、日本人のほか、中国人やタイ人、フィリピン人といったアジアからの観光客でごった返していたが、閑散としていた。店の売り子の表情も冴えないように見えた。

そんな上野や御徒町周辺で、かつて男たちの欲望のはけ口となっていたのが、中国人やタイ人の女性たちが本番行為を行っていたエステである。

私の友人に、上野に足繁く通い続けてきた40代後半の男がいる。彼の目当ては、本番行為ができるチャイナエステである。

彼はチャイナエステや中国人専門のデリヘルなどの情報に精通していて、月に何度も上野、日暮里、大塚、錦糸町、竹の塚、さらには埼玉県の越谷などの店に足を運んでは、好みの女性を探していた。そんな彼の一番のお気に入りが御徒町なのだった。

「理由は、中国人の若い子が多かったんです。エステの女性は留学生が多くて、20代の子ばかりでした。他の場所だと、どうしても年齢層が高くなったりして、御徒町ほどのクオリティーはないですね」

これまで彼の心を満たしてきた御徒町だったが、コロナ禍になって、異変が起きているという。

「御徒町だけじゃないんですが、コロナが流行しだしてから、中国人の留学生がほとんど帰国してしまったんです。その結果、経営者は中国人のままなんですが、エステ嬢がタイ人や日本人に入れ替わってしまいました。錦糸町のエステで試しに一度、日本人の女性を呼んでみたんですけど、僕と同年代の女性が来てがっくりしたことがありました」

今は日本より中国の方が安全

そんな彼を通じ、中国に帰国した女性に話を聞いた。24歳のヤンは、生まれ故郷の成都に帰っていた。

「コロナの前は、上野で稼いでいました。学校にも通いながら夜だけ働いていたんですけど、少なくても月に30万円は稼げました。けど、コロナが流行してからは、すぐ中国に帰国しました。勉強しながらお金を貯めることができたので、コロナが落ち着くまでは日本には戻りません。今では日本より中国の方が安全です。周りの友人たちも、お金を稼ぎたい子は日本ではなく上海などの中国内の大都市に行っています。コロナが収束したら日本には戻りたいですが、今は無理ですね」

同じ上野の仲町通りには、風俗ではないが、フィリピンパブなどの外国人パブが軒を連ねている。それらの店の中には、東京都からの時短要請に応じない店も少なからずある。

そのうちの一軒に勤めるフィリピン人女性のローズに話を聞いた。彼女は日本に暮らして10年以上になるシングルマザーで、2人の子どもを育てながらフィリピンパブで働いてきた。

「お店は、1回目の緊急事態宣言が出た時にちょっと休んだだけで、今年に入ってからはずっと営業していますよ。今もです。夜の8時を過ぎると看板を消していますが、お酒も出していますし、普段とまったく変わりません。だって、協力金をもらって休んでいては、家賃も高いですし、スタッフのお給料も払わないといけないから、やっていけないと言っています」

しかし、給料などに影響は少なからずあったようだ。

「私は毎日働いているわけではないですけど、コロナ前は月に平均20万円ぐらいは稼げました。けど、今は半分とまではいかないですけど、15万円にいかないぐらいです」

お店を変えた人がたくさんいる

職場環境にも影響が出た。

「私の周りで、この仕事を辞めた人はいませんが、お店を変えた人がたくさんいます。少しでもお客さんが来る店に移ったほうがいいですからね。それでも、コロナを気にして、新しいお客さんは、ほとんど来ないので、常連さんの取り合いみたいになっています。コロナ前だったらほとんどなかったんですけど、こっそり他の子を指名しているお客さんの電話番号を聞いて、店を移ってから呼んだりするので、女の子同士でトラブルになったりしています。女の子の間に、コロナの前はマナーがありましたが、今はそんなことを気にしていられずギスギスしていますね」

上野のニューハーフエステで働いていたというニューハーフのユリ(25)にも話を聞いた。上野はもともと男娼が多かったことでも知られる街だが、その伝統なのか、今もニューハーフがサービスする風俗店が少なくない。

ユリが働いていたヘルスには、6人のニューハーフが在籍していたという。

「管理がしっかりしているお店で、いい加減な人はいなかったので、すごく働きやすいお店でした。コロナが流行りだして、最初の緊急事態宣言が出た去年の4月ぐらいからは、ガクンとお客さんが減ったんですけど、それから大きな影響を受けたことはありません。ニューハーフが好きな人は、そんなにお店の選択肢もないので、どうしても同じ店に来るんですよ」

客はほとんど減らなかったが、彼女自身がコロナを気にして店を辞めたという。

「今は母親と暮らしているので、万が一コロナをうつされて、母親も感染したら嫌だなと思ったんです」

夜の街の人の流れは、政府や都が自粛を要請したところで、大きく止まることはない。男たちは欲望に忠実に今日も夜の街を徘徊し続けている。

八木澤高明(やぎさわ・たかあき)
神奈川県横浜市出身。写真週刊誌勤務を経てフリーに。『マオキッズ毛沢東のこどもたちを巡る旅』で第19回 小学館ノンフィクション大賞の優秀賞を受賞。著書多数。

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AlexSmith / shutterstock

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