アカデミー賞6部門ノミネート! 映画『ANORA』はシンデレラストーリーの先を描く人間賛歌【LiLiCoオススメ肉食シネマ第305回】

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お仕事お疲れさまです。

今回の作品はアカデミー賞にも絡む衝撃作! まさに、感情のジェットコースター! 見終わったら一度、気持ちを整理したくなる(良い意味で)。

ストリップダンサーとして働く“アニー”ことアノーラ。働くクラブで男性を挑発しながら、その美貌で魅了し、持っているテクニックをフルに生かして少しでも多くお金がもらえるように頑張る日々。

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そんなある日、夢のような話が! クラブに来たロシアの富豪の御曹司イヴァンが、アニーを“契約彼女”として雇いたいと…。

信じられないような話と思いながらも家に行くと、ラグジュアリー感を超えたデラックスな豪邸。まるでシンデレラストーリー!

それからの日々といえば、派手なパーティー、買い物三昧など、絶好調にお姫様気分!

そして、最高の日々の締めくくりにイヴァンと行ったラスベガスで、このまま一緒に居ようと結婚。ここまでのスクリーンはカラフルで、官能的に彩られていて、心臓の鼓動を自分でも感じるほどホットでセクシーな時間。男女問わずワクワクします。

でも、突然、ロシアにいるイヴァンの両親がこの結婚に猛反対。ここから作品の雰囲気がガラッと変わります。

セクシーの後はユーモラスに

アニーを豪邸から追い出すために手下を2人の元へ送るけれど、今まで強く生きてきたアニーはなかなか手強い!

「イヴァンと一緒にいたい」という強い気持ちが湧き、別れさせようとする男たちに対しての口の悪さったら…!

あれを言われれば、誰だってドン引き。冒頭のムラムラむんむんの色気はどこかに消え、突然のコメディー。マスコミ試写会でも笑い声が何度も響きました。

アニーにはマイキー・マディソン、イヴァンにはマーク・エイデルシュテイン。日本では、かなり映画通じゃないとピンとこない名前ですが、みんな最高に良い!

アカデミー賞では主演のマイキーのほか、別れさせにきたイゴール役のユーリー・ボリソフも助演男優賞にノミネート。また作品賞、監督賞、編集賞、脚本賞にもノミネート。

セクシーからのコメディーで終わるかと思ったら、ラストに向かってアニーの心情が見えてくる。本当の愛には何が求められるのか、何が大事なのか。

でもアニーにとっては…。切なくて心が張り裂けそうでした。

私はしばらくアニーを抱きしめてあげたかった。

ANORA アノーラ
監督・脚本・編集:ショーン・ベイカー
ソフ、カレン・カラグリアン、ヴァチェ・トヴマシアン
配給:ビターズ・エンド ユニバーサル映画
※2月28日(金)全国ロードショー

「週刊実話」3月6・13日号より

LiLiCo(リリコ)

映画コメンテーター。ストックホルム出身、スウェーデン人の父と日本人の母を持つ。18歳で来日、1989年から芸能活動をスタート。TBS『王様のブランチ』、CX『ノンストップ』などにレギュラー出演。ほかにもラジオ、トークショー、声優などマルチに活躍中。