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北朝鮮“女帝”金与正の目に余る毒舌ぶりが王朝転覆を招く!?

北朝鮮“女帝”金与正の目に余る毒舌ぶりが王朝転覆を招く!?
(画像)Es sarawuth / shutterstock

北朝鮮の〝女帝〟こと金与正党宣伝扇動部副部長の毒舌が止まらない。

5月2日には「南側で起きているゴミのような奴らの妄動」「責任は汚いゴミに対する統制をとらない南朝鮮(韓国)当局が負うことになるだろう」と、北朝鮮の体制を批判するビラを散布した韓国の脱北者団体や、それを押し止められなかった韓国政府を罵倒した。

ところが、北朝鮮国民からやんやの喝采を浴びているかと思えば、実際はそうでもないらしい。

「北朝鮮は儒教社会ですから、年配者や国のために命を懸けた人たちが尊敬される。日米はともかく、同胞の韓国にも容赦ない与正氏のスタンドプレーに、年配の党幹部や戦争老兵(朝鮮戦争参戦者)の中には『くそ生意気な娘』と快く思っていない人も多いのです」(韓国紙記者)

北朝鮮は、国連からの経済制裁やコロナ禍で深刻な不況に苦しんでおり、経済的に余裕がある韓国と手を結び、活路を見いだすべきだと考える党幹部もいる。南北交流ができれば暮らしはよくなるはずだが、なぜ、それが分からないのかという批判である。

ところで、北朝鮮は5月12日、金正恩総書記の対外活動をまとめた写真集『対外関係発展の新しい時代を広げられて』を公開した。

与正氏が副部長を務める「党宣伝扇動部」が中心となって編集し、北朝鮮の外国文出版社が制作してインターネットで公開したものだが、写真集から韓国の文在寅大統領だけそっくり抜け落ちているのだ。

「写真集には正恩氏にとって初の対外活動である中国訪問(2018年3月)を皮切りに、板門店で開かれた米朝会談(19年6月30日)までの内容が扱われています。米国のトランプ前大統領やロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席などはしっかり登場していますが、文大統領との3回の首脳会談に言及しないどころか、板門店会談からはその姿が消去されているのです。韓国に対する不満を意図的に表したとみるのが妥当でしょうが、あまりに子供じみています」(北朝鮮に詳しい元大学教授)

軍紀は落ちるところまで落ちている…

与正氏は「最高尊厳」たる正恩氏の保護を金科玉条とするため、結果的に庶民の反感を買ってしまうことがある。例えば昨年、与正氏は兵役を1~2年短縮する措置をとったが、この改革に伴うトラブルが止まらないのだ。

「庶民層出身の兵士にとって、世界で最も長いとされる兵役期間(男性9~10年、女性6~7年)を全うすることは、立身出世に必要な『党員資格』を得るほとんど唯一のルートです。与正氏は、入党推薦をめぐり上役に賄賂を積んだり、女性兵士に性的な関係を求めたりする悪習の撲滅を狙ったのですが、これがとんだマイナス効果を生んでしまった。突然の兵役短縮により、党員資格を得られない兵士が続出したのです」(北朝鮮ウオッチャー)

咸鏡南道の軍隊では、入党に向けて手続きを行っていた分隊長が急に除隊させられ、入党がかなわなくなったことに恨みを抱き、党員登録課長の家にガソリンをまいて放火。分隊長本人と課長、その家族と隣人ら20人が焼死する大惨事が起きている。

将来に対する不安から、朝鮮人民軍では下級兵士が続々と脱営(脱走)しており、飢餓とコロナ禍も重なって軍紀は落ちるところまで落ちているという。

そんな中、真偽のほどは定かでないものの、韓国三大紙の一角『東亜日報』が5月8日に衝撃的なニュースを報じた。

“三大悪女”超えと酷評

「与正氏の直属の上司で、党宣伝扇動部を統括する朴泰成書記が『粛清された可能性がある』との内容です。北朝鮮は3月に党幹部の講習会、4月には党書記大会を開催しました。いずれも朴氏が出席すべき大切なイベントであったにもかかわらず、最後まで姿を現しませんでした。こうした事実から、韓国メディアは朴氏の失脚説を報じるようになっていたのです」(同)

朴氏は韓国への対応でも重要な役割を担う1人で、今年1月の党大会の時点では、党政治局の序列1位だった最高幹部。宣伝扇動部長だけでなく最高人民会議議長なども歴任し、正恩氏の国内視察や外国訪問にもたびたび同行していた。

「東亜日報の記者は『行政上のミスが問題視されたようだが(粛清の)本当の理由は不明』と解説。一方で、与正氏との間で葛藤があったとも指摘している」(同)

北朝鮮では頻繁に幹部の粛清が行われる。独裁体制下にあっては保身やライバルの追い落としのために、さまざまな謀略、策略、陰謀が渦巻く。

「暴君に〝耳打ち〟できるのは与正氏だけです。現体制は『万事与通(すべてのことは与正を通さなければならない)』ですから、何者かが朴氏をおとしめるため、反党的な内容を吹き込んだのかもしれません。いずれにしても朴氏ほどの大物が粛清、もしくは失脚したとすれば、与正氏が絡んでいることは間違いないでしょう」(前出・韓国紙記者)

朝鮮王朝史(李氏朝鮮)の中で国家を私物化した「三大悪女」といえば、韓国時代劇によく登場する張緑水、鄭蘭貞、張禧嬪といった日本でもおなじみの面々だ。

その最期は斬首、自害、死罪という悲惨なものだが、傲岸不遜な与正氏は、彼女たちに大差をつける悪女になるのか。
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