フジテレビ会見は“現代ニッポンの縮図”である 暴走するジャーナリズムと加速装置的ソーシャルメディアはどこへ向かうのか?

フジテレビ
異例というよりも異質な会見だった。1月27日、フジテレビが元タレント・中居正広氏を巡る一連のトラブルで会見を行った。

受付時間は14時。13時半ごろフジテレビ本社に着いたが、すでに多くの報道陣が行列を作っていた。
列を作る報道陣
金属探知機を使った手荷物検査を受け、会場に入ったのはすでに15時近く。191媒体、437人が参加したという会見が終わったのは、なんと28日午前2時20分過ぎだった。

異例の10時間を超える会見になった理由は、“フルオープンな会見”であり、事件の本質を話せないフジテレビ側と記者の質問が嚙み合わなかったことが原因だろう。

そもそも、今回の会見が行われた理由は、17日に開催された会見が閉鎖的だと批判を招いたため。

「会見場が狭い」ことを理由に、記者クラブのみの参加で開催されたが、生中継や配信もNG。そこで週刊誌やフリージャーナリストも参加できる会見として、27日に再び開催されることになった。
会見の様子
会見の内容は多く報道されているため、詳細は割愛する。異質だったのは20時すぎの“ヤジタイム”だ。とあるジャーナリストの質問をきっかけに、会場からヤジが飛び交う。 

そこから会見は一時破綻。ジャーナリストは会見の本質に迫る質問だと強気な姿勢だったが、フジテレビ側は回答を濁すだけだった。 

しかし、そもそもフジテレビ側が詳細を話せないのは当たり前だろう。中居氏のトラブルは示談が成立しており、罪に問われていない。 

AとBの平行世界で生きている現代人

週刊誌が話題を掘り起こし、会見の中で“国民の声”と称されたソーシャルメディアで議論が加速。週刊誌は“被害女性X子”や“フジ編成幹部A氏”といった旨で報じたが、インターネット上では人物を断定し、誹謗中傷している。 

フジテレビ側が「A」までの話しかできないのに、ジャーナリストが「B」を追及しても答えが出るワケがない。 

つまり、暴走するジャーナリズムをソーシャルメディアが加速させ、“並行世界”を生み出しているのが現代のニッポンなのである。 

当該女性のプライバシーを尊重するフジテレビ側が開示されていない当事者間の情報を明かせるはずがなく、「第三者委員会」「プライバシー」「センシティブ」と答えざるを得ない。むしろ情報をペラペラと明かす方がガバナンス不全だろう。 

会見の質疑応答が10分のディレイ中継になったのは、「プライバシーの侵害の恐れがある発言」を避けるため。ヤジは司会者にも飛び火したが、質問を遮った彼の判断や対応は正しい。プライバシーを侵害されたくないという被害女性に寄り添ったのは、どちら側なのかは言うまでもない。 

もちろん、トラブルがあったと認めている中居氏や、フジテレビ側がトラブルを知っていて隠蔽していたことは大いに問題がある。いわゆる“上納システム”があったかという点も第三者委員会の結果を待ち、追求されるべきだ。 

だからこそ正義感を燃やすジャーナリストや、ソーシャルメディアユーザーが生まれるのだろう。 

だが、火種の一因となった週刊誌は28日、中居氏にまつわる報道を一部訂正。 

《本記事(12月26日発売号掲載)では事件当日の会食について『X子さんはフジ編成幹部A氏に誘われた』としていましたが、その後の取材により『X子さんは中居に誘われた』『A氏がセッティングしている会の“延長”と認識していた』ということがわかりました》 と説明している。 

出版社の主力であった紙媒体は売上が右肩下がりのうえ、紙代と印刷代は高騰し、ますます苦しい状況となっている。 

その代替としてウェブメディアに力を入れてきたが、プラットフォームにPVを奪われるだけで、ニュース提供元への還元は少ない。 

そんな時代にアテンションエコノミーは再び力を取り戻し、一部の層がインフラとして使うソーシャルメディアの力を借りて、話題が話題を呼ぶ状況を生んだ。 

当然だが、アテンションエコノミーについて「週刊実話Webが語るな」という批判はごもっともな指摘である。 

暴走するジャーナリズムを止めるのは、また違ったジャーナリズムであり、報道を受け止める“国民の声”なのだ。 

フジテレビが優先するべきは、事態の解明と被害女性、そしてキャンセルされそうなフジテレビ従業員やその従事者たちの保護だろう。

ゆりかもめ終電間際のフジテレビ
撮影・文/週刊実話Web編集部