岐阜に行きたくなる!『怪獣ヤロウ!』は応援の気持ちで見たいご当地お笑い映画【やくみつるのシネマ小言主義第271回】

(C)チーム「怪獣ヤロウ!」
脚本・監督の八木順一朗氏は、元々は中学・高校までの間に計13本もの自主映画を作成した根っからの映像マニア。それが高じて、芸能プロダクション『タイタン』でマネジャー職に就く傍ら、映画監督としても活動しているそうです。

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本作は、怪獣映画好きの少年が長じて市役所の観光課職員になり、ひょんなことから市長にご当地映画づくりを任される話ですが、そのドタバタ劇と少年の頃の夢を取り戻していく様が、監督のバックストーリーと重なります。

自分は、とある地方TV局で「ふるさとCM大賞」の審査員を約20年以上に渡り仰せつかっています。

映画ではなく約30秒ほどのCMですが、各市町村がいかに知恵を絞り、手法を変え、映像に凝って、どれだけ地域おこしに力を入れているかを長らく見知っています。

本作は「刃物」と「鵜飼」の町、岐阜県関市にある地場産業各社を巻き込んだリアルご当地映画。八木監督が同市出身である他、登場人物を演じている役者も、市長役の清水ミチコを始めとした岐阜県出身者を数名起用したそうです。

それを映画館の大画面で見ても耐えうるだけの作品にまで仕上げたという主旨に賛同しました。

本誌読者の皆さんも、従来の商業映画とは一線を画したふるさと応援映画として、温かい気持ちで見ていただきたい…そう言っても失礼には当たらないと思います。

怪獣特撮映画へのオマージュも満載

さて、私ごとになりますが、自分は昨年の年越しを岐阜市で迎えているんですね。

岐阜市からさらに飛騨高山に向かう高速道路で、岐阜市の隣の関市にまず入ったんです。

超メジャーな観光地も好きですが、自分の癖として、その間にある未踏の地を訪れたくなる。

「刃物の町」としか知らない関市にも訪れないといけないなと思った矢先の本作との出会いでした。

自分のような物好きには、PR映画として十分に機能しましたね。

これをきっかけにちょっくら出かけてみるかと、その気になっています。

もう一つの見どころとして、怪獣特撮映画のオマージュが散りばめられているそうです。

本誌の読者的には親しんだ世界だと思うので、そういうシーンを数えるのも一興かと。

あまり肩肘張って見るのではなく、低予算映画が流行する中、このチープさを楽しめば良いのでは。

先行公開の岐阜県では盛り上がっているのか、ドン引きされているのか、反響が楽しみです。

怪獣ヤロウ!
監督・脚本:八木順一朗
出演:ぐんぴぃ、菅井友香、手塚とおる、三戸なつめ、平山浩行、田中要次、麿赤兒、清水ミチコ
配給:彩プロ
1月24日(金)岐阜先行公開、1月31日(金)全国公開

岐阜県関市。市役所の観光課に務める山田一郎(ぐんぴぃ)はある日、市長から“ご当地映画”の製作を命じられる。しかし、どこにでもある“ご当地映画”に疑念を持った山田は、かねてからの夢だった〈怪獣映画〉の製作を思いつく。いつも失敗ばかりでダメな自分を変えるため張り切る山田だったが、その熱意は、市政を巻き込んだ大事件へと発展していき…。

「週刊実話」2月13日号

やくみつる

漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。