古い価値観を押し付けて子供を翻弄する親の「老害」解決策は物理的&精神的境界線をつくること!

『わたしの親が老害なんて』西野みや子
◆『わたしの親が老害なんて』KADOKAWA/1200円(本体価格)

――「老害」をテーマに取り上げたのはなぜですか?

西野「私にとって『老害』は、特別なものではなく、身近で誰にでも起こり得るものだと思ったので、担当編集の方から提案されたときに、このテーマで漫画を描いてみたいと思いました。私は30代で母は50代、本格的に親の面倒を見るという経験はありません。しかし、限界集落出身の私は、子供の頃から男尊女卑や古めかしい考えに触れることが多く、単身での都会暮らしをした経験も相まって、よりその異質さを理解しているつもりです。私は母や祖父母を『老害』と思ってはいませんが、田舎で暮らしたことがある方なら『老害』の要素を感じた瞬間はあるのではないでしょうか」

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――親との折り合いに悩んでいる読者も多いのでは?

西野「長年の経験からくるプライドの高さと、加齢による判断力の低下や感情の抑制が利かなくなることがトリガーになってトラブルが起こると思っています。親にとってはいつまでたっても子供なので、話を冗談半分にしか聞いてくれないなんてこともあるでしょう。私は身近にいる上の立場の人に自分の意見を代弁してもらうことにしています。例えば、かかりつけの医者や教員など“先生”と呼ばれる立場の方が言っていたよと伝えると、年配の方は少しは耳を貸してくれることが多いですね」

物事をフラットに捉える

――最終的に「両親と距離を置く」ことが、前向きな解決策となりましたね。

西野「一番は負担を分散することだと思うのですが、子育てでさえ閉鎖的で人手不足な社会において、なかなか容易なことだとは思えません。両親と自分との境界線をしっかり持つことが大切だと思います。物理的に距離を置くことができない場合は、精神的に距離を置く。物事を俯瞰で見ることは自分の心のためにもなりますし、相手への尊重にもなると思います」

――主人公の栄子が、最後にまさかの行動に出ます。最初から予定していた展開だったのでしょうか?

西野「誰にでも起こり得る『老害』を描きたかったので、この話の最後の展開は早い段階から決めていました。本のタイトルは、作中の親子どちらにも当てはまるもので、バッドエンドとは思っていません。私自身も新しいものに偏見を持たず、お互いの常識を押し付け合わず、物事をフラットに捉え、受け入れながら生きていきたい。そして、悪あがきをしながらも前向きに進んでいきたいです」

聞き手/程原ケン

「週刊実話」2月6日号より

西野みや子(にしの・みやこ)

山口県在住の漫画家。1児の母で、エッセイ漫画と育児漫画を自身のSNSで投稿している。