「親ガチャ失敗」を跳ね返し4人の子供をエリートに育て上げた元暴走族夫婦のアッパレすぎる教育法

画像はAIで生成したイメージ
「『カエルの子はカエル』ではなく『トンビがタカを産んだ』と言わせたい」

そんな強い意思のもと子育てをしてきたのは、夫婦ともに「元暴走族」という経歴を持つ、石川誠さん(51歳)・明子さん(51歳)だ。

「私たち夫婦はどちらも複雑な家庭で生まれ育ちました。夫の父親はヤクザで、お金と女にだらしがないうえ、DVが絶えないというクズ。夫の母親はダンナに愛想をつかしてか家出を繰り返していたそうです」

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そう話す明子さんは母子家庭育ち。

「私の母親は中学を卒業すると水商売や風俗を転々とし『父親が誰か分からない』という状況で私を産みました。私は中学を卒業するまで施設を出たり入ったりしながら育ちました。母親から愛情を感じたことはありません」

「そんな家庭で子供がまともに育つはずがない」と顔を見合わせる石川さん夫婦は、ともに中学時代からグレ始めて暴走族に加入。集会で知り合い、18歳の時に「授かり婚」をしている。

二男二女の4人の子宝に恵まれた夫婦が思ったことは「ダメ人間の血は自分たちの代で終わりにしよう」ということだった。

「人間は環境に左右される生き物だと思ったので、まず収入や夫婦仲、親子関係などを含めて家庭を安定させ、それから子供の教育に情熱を注ぎました。親がバカだと子供もナメられると思ったので、私も夫も小学校からの勉強をやり直しました」

テレビは基本的にニュース、ドキュメンタリー、クイズ番組しか見せず、ドラマや映画は内容を選んで見せるという「家庭内R指定」を徹底させた。

「エロ・グロ・暴力は好ましくないと思いましたが、完全に排除すると逆に歪んでしまうので『こういうのは不適切である』という前提で触れさせました。子供の疑問や質問にはとことん付き合い、知ることや学ぶことの大切さを、私と夫の反省を含めて伝えましたね」

教育は親の自己満足?

建設業に従事していた誠さんは、30歳の時に独立して経済的な余裕もできたが、贅沢や遊びは封印して、時間もお金も子供たちの教育に注いだ。

「塾も習い事も子供たちの望むようにさせました。無理強いはしない代わりに始める時もやめる時も熟考させるようにしました。本と教材にかけるお金も惜しみませんでした。これを言うと『毒親』だと思われるかも知れませんが、付き合うお友達も選びました。子供は『付和雷同』になりがちじゃないですか? それを懸念したからです」

「特にこんな職業に就いてほしい」ということはなかったが、4人の子供たちはそれぞれ自分の道を見つけている。

「長男(32歳)は医者になりました。今は勤務医ですが、いずれ開業医になりたいと言っています。次男(27歳)は弁護士です。この子もいずれ独立する予定です。長女(31歳)は介護関連の会社を複数経営しています。次女(28歳)は外国のエアラインのCAをやっています」

4人の子供たち全員がエリートで高収入。その気になれば「左団扇」で暮らせるはずだが、夫婦は今でも年季の入った借家住まいを続け、子供たちからは一切の援助を受けずに暮らしている。

「子供たちに世話をかけたくないんですよ。子供たちが稼いだ金は本人たちのものですから」

「…でも、でもこれまでにかなりの大金を使ってお子さんを育てて来ましたよね?」と筆者が問いかけると、「それは親の自己満足なので(笑)」と一笑。どこまでもアッパレなご夫婦だった。

取材・文/清水芽々

清水芽々(しみず・めめ)

1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。