トランプ大統領就任で日本は中国と米国の板挟みに…あぶない中国共産党の目論見を裏の裏まで徹底解剖!

『あぶない中国共産党』峯村健司
◆『あぶない中国共産党』小学館新書/1000円(本体価格)

――かつて朝日新聞で北京特派員を務めていたそうですね。取材の自由はあったのでしょうか?

峯村「2007年から13年の間、中国総局特派員として、中国共産党や軍事問題などを取材しました。数々のスクープがあったこともあり、当局から完全にマークされていたため、25回拘束されました。10年には中国軍の最新鋭のステルス戦闘機を撮影した後、レストランで食事中に公安に取り囲まれました。釈放されるまで9時間くらいかかり、こってりと取り調べられました。14年にできた反スパイ法の前だったので、この程度で済みましたが、今だったら完全にアウト。裁判所行きは確実でしょう」

【関連】被害者が一転、加害者に…男子小学生の自殺未遂を発端に“いじめ問題のタブー”に切り込んだ禁断コミック ほか

――共産党幹部にはかなりの「特権」があるといいますが?

峯村「共産党員は1億人いますが、中には土地売買などで数十億円もの賄賂を手にしている者もいます。また軍では、『お前を将軍にしてやる』と部下をそそのかし、賄賂を手にする幹部もいる。権力の錬金術がシステム化しており、キックバックや賄賂の価格表まである。中国では1%の特権階級が99%の資産を持っています。日本でも格差社会が叫ばれていますが、比べ物にならない異常な状況と言っていいでしょう」

台湾有事はもう始まっている

――台湾有事がささやかれています。本当に戦争は起きるのでしょうか?

峯村「台湾有事はすでに始まっています。習近平政権は台湾が国交を結んでいる国々に断交するように圧力をかける外交工作に始まり、経済制裁に着手しています。すでにミサイル演習を実施し、台北周辺の上空を通過して台湾東沖に着弾しています。また、アステラス製薬の男性幹部の拘束やサイバー攻撃などで、日本政府に台湾有事への介入をしないよう揺さぶりをかけている。私は習近平が在任中に国家統一に踏み切る蓋然性が高いと考えています。それは総書記としての3期目が終わる27年です」

――米国ではトランプ大統領が誕生しました。今後、中国と米国との関係はどうなりますか?

峯村「トランプ大統領は中国製品に対する関税を60%に引き上げると公言し、中国をけん制しています。もっとも中国にとって関税はそれほど痛くない。むしろ米国の抑圧的政策に屈しない姿勢を見せ、やられたらやり返すチキンレースが繰り広げられるでしょう。日本は中国と米国の間で板挟みになり、苦しむことになる。まさに悲劇的な状況と言っていいでしょう」

聞き手/程原ケン

「週刊実話」1月30日号より

峯村健司(みねむら・けんじ)

キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。北海道大学公共政策学研究センター上席研究員。朝日新聞で中国総局(北京)特派員を務め「胡錦濤完全引退」をスクープ。著書に『台湾有事と日本の危機』(PHP新書)など。