昭和情緒満載の映画『私にふさわしいホテル』はコメディエンヌ“のん”の魅力が炸裂!【やくみつるのシネマ小言主義第269回】

怒ったり泣いたりとメリハリのある表情や声のハリ方もそうですが、足の踏ん張り方など全身を使った表現がコメディエンヌとしての真骨頂なんだなと強く思いました。
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実物を見たときは半端なく可愛かったですが、映像上では少年のようなというか、中性的な存在感が唯一無二ですね。
そして、もう1人の主役と言えるのが物語の舞台となった『山の上ホテル』。川端康成や三島由紀夫など多くの文豪が利用したことで知られる東京・神田駿河台にある老舗ホテルです。
老朽化のため2024年2月から休舘中ですが、休館前の内装や調度品までつぶさに撮影した本作は、図らずも昭和建築の趣を残す貴重な映像になったのではないでしょうか。
自分は泊まったことはないのですが、バーはたまに使っていました。締め切りを抱える身としては、このホテルでの「カンヅメ」は憧れの的ですね。
原作者の柚木麻子さんも同様の思いでここを舞台に女性作家の小説を書かれたのかもしれません。
まあ、万が一、自分がこのホテルで「カンヅメ」になったとしたら、こっ恥ずかしくていたたまれないでしょうが。
物書きが物書き然としていた時代設定
さて、原作では平成だった物語の設定を、堤幸彦監督が1980年代の昭和に変更したそうです。
作品は万年筆で原稿用紙に書き、文学賞の知らせを文壇バーの黒電話で受け取るなど、「物書き」が「物書き」然としていた昭和の情緒が確かに効いています。
そして、脇を固めるキャストは、田中圭と滝藤賢一という抜かりのない布陣。3人の掛け合いが軽妙すぎて、堤監督作品の『トリック』を思わせました。
ギャグ要素を散りばめた人気TVドラマのように、年末年始に気楽に見るにはちょうどいい。自分もそういう方が性に合っています。
ところで、自分はどうしても細かいところが気になるタチです。
例えば滝藤が乗ってくるハイヤー。私の見立てでは「初代センチュリー後期型」で、1980年代後半にピッタリの選車です。
本作のエンディングのクレジットに入った各種撮影車両手配の『マエダオート』が、ここでもいい仕事をしています。
たった一つ気になるのが、のんの万年筆の持ち方。親指を不自然に伸ばしていて、今どきの若い女性に多い持ち方です。
あれは主人公のがさつな性格を演出した一環なのでしょうか。監督に聞いてみたいものです。
私にふさわしいホテル
監督:堤幸彦
出演:のん、田中圭、滝藤賢一、田中みな実、服部樹咲、髙石あかり、橋本愛、橘ケンチ、光石研、若村麻由美
配給:日活/KDDI 12月27日(金)全国公開
新人賞を受賞したものの大物作家・東十条宗典(滝藤賢一)から酷評され、小説を発表する場すら得られなかった新人作家の加代子(のん)。憧れの『山の上ホテル』に宿泊した加代子は、東十条が上階に泊まっていることを知る。大学時代の先輩でもある担当編集者・遠藤(田中圭)の力を借りて東十条の執筆を邪魔し、締切日に文芸誌の原稿を落とさせることに成功する。しかし加代子にとって、ここからが本当の試練の始まり。加代子と東十条の因縁の対決は、予測不能な方向へと突き進んでいく。
「週刊実話」1月9・16日号より
やくみつる
漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。
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