「今後は死にいくさまを歌っていく」結成40周年『ZIGGY』のヴォーカルが激動の過去と未来を展望

『辿り着いた場所森重樹一 回想録』森重樹一
◆『辿り着いた場所森重樹一 回想録』リットーミュージック/2700円(本体価格)

――森重さんの激動の半生が語られています。本を書こうとしたきっかけは?

森重「昨年8月28日の誕生日で還暦を迎えました。後悔ばかりが膨らんでいるわけではなく、逆に近年の俺は、ここまで来られて良かったと思うことの方が多い。本を書くことで、自分の人生を真摯に振り返り、今後の人生について考えてみたいと思いました」

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――結成40周年記念アルバム『For Prayers』が10月23日にリリースされました。今回のアルバムに込められた思いは?

森重「アルバムを作れる喜びが最初にあります。自分が40年前に書いた曲をプロローグとエピローグに使うことでコンセプト感を持たせたかった。決して感傷的な意味でなく、このタイミングでしかできないという意味で、アルバムに盛り込みたかった。去年、ZIGGYのオリジナルメンバーのベーシスト岩田仁樹君が、還暦を迎える直前に亡くなってしまった。亡くなった友達に捧げることができればいいなと思っています」

飲酒は元気の前借りのようなもの

――過去にはアルコール依存だった時期もあったそうですね。

森重「20代の頃、俺のステージ・ドリンクはワインでした。週にボトル8本ぐらいウイスキーを飲んでいた時期もありましたが、そのときはまさか自分が病気だとは思ってもみなかった。病院は病人がいないと商売にならないし、製薬会社は薬を売らなければ商売にならない。飲酒というのは元気の前借りのようなもので、いつかはそのツケを返さないといけない。俺は酒の怖さも知っているし、楽しさも知っている。だからそう簡単に自分の日常から酒を追い出すことはできないし、それができたとしても継続することは非常に難しい。自分は病気だという言葉に洗脳されていたに過ぎないと思っています。命をつなぐ術は人それぞれ、いろいろあるのではないでしょうか?」

――12月で24年のツアーも終わります。今後の予定を教えてください。

森重「歌を書きます。そして歌います。それ以外にやりたいことがないから。結局これからの自分は、人が老い、死んでいくさまを歌っていくしかないのだと思う。死を迎える日に近付いていく自分の心情を、言葉とメロディーに転換して形にしてみたい。具体的な予定は未定ですが、改めてバンドを楽しむために、少しソロアコースティックをモチベーションに行いたいと思っています」

聞き手/程原ケン

「週刊実話」12月26日号より

森重樹一(もりしげ・じゅいち)

1963年8月28日生まれ、東京都国立市出身。84年にロック・バンドZIGGYを結成する。87年メジャーデビュー。『GLORIA』は約33万枚(オリコン3位)を売り上げ、ZIGGY最大のヒット曲となった。