「106万円の壁」撤廃のどさくさにまぎれ社会保険料増を画策する厚労省の火事場泥棒ぶりを森永卓郎が痛烈批判!



200万人のパート収入が減少の本末転倒

現在、最低賃金の全国平均は1055円だから、実質的に年収110万円を超えるすべての労働者が社会保険料を支払うようになる。

106万円の壁と言っても、これまでは従業員50人以下の企業のパートタイマーは年収130万円までは社会保険加入の義務がなかった。

ところが、厚労省はその企業規模要件も撤廃するという。

この制度変更によって、新たに200万人ものパートタイマーに社会保険の加入が義務づけられ、手取り収入が大幅に減少することになる。

国民民主の公約は労働者の手取りを増やすことで、パートタイマーに関しては無税・無保険料で働ける労働時間を増やすというものだった。

だが厚労省は、どさくさに紛れて、とんでもない負担増を課そうとしている。まさに「火事場泥棒」そのものなのだ。

私は、どうせそこまでやるのなら、週20時間という最低労働時間条件や保険料が増えなくなる年収上限の条件も撤廃して、とにかく1円でも稼いだら30%の保険料を取りますよというように制度改正をしたほうがましだと思う。

そうすれば、年金未納の問題もなくなるし、現在、保険料を支払っていない専業主婦への批判もなくなる。

ただし、この制度を導入するためには、保険料の課税ベースを収入から経費を差し引いた後の所得に変更する必要がある。

自営業者やフリーランスに収入ベースの保険料を課したら、みな潰れてしまうからだ。

税金は収入ではなく、所得にかかっているのだから、できない相談ではないだろう。

いずれにせよ、106万円の壁撤廃に関しては、短期的な対応と同時に、中長期的にどうするかという抜本改革の構想が不可欠だ。

どさくさ紛れの負担増を許してはならないのだ。

「週刊実話」12月5・12日号より