「家族には内緒」生命保険を切り崩し“大人の遊び場”通いを続けた66歳元IT技術者の修羅場と誤算~欲望に命をかける高齢者(3)~



風俗遊びで持病が悪化

「貯金をほぼ使い果たしたんです。退職金はけっこう残っていましたけど、妻への労いとして定年後に行こうと話していた『豪華客船で行く海外クルーズ』の約束も果たしていないし、老後の生活資金もあるから手はつけられない。とはいえ、風俗通いは止められない…そんな中の苦肉の策が生命保険の解約金だったんです」

保険の契約担当者は義雄さんの友人で、その昔「ノルマを果たせない」と泣きついてきた際に加入したものだが、「その友人も定年退職している今、何の躊躇がいるのか」と解約に踏み切ったという。ところが――。

「罰があたったんでしょうね。解約金で遊ぶようになってから僕の持病が悪化して、とうとう入院することになったんです。それで妻が保険金を請求しようとしてバレました」

「何に使ったの!?」と問い詰められた義雄さんは、隠しきれずに洗いざらい白状したという。

「無趣味の上、酒も飲まずギャンブルもやらない僕には、数百万のお金を使い込む理由をでっちあげることすらできなかった。そこですべてを話したんです」

当然だが、妻の真知子さんは呆れ果てた。

「『40年近く一緒にいて、そういう人だとは思わなかった』と言われ、医者の勧めで使っていた新薬を『お金がかかる』という理由で中断させられました。命にかかわるわけじゃないと思うので別にいいんですけどね(苦笑)」

現在、新薬同様に「お金がかかる風俗通い」を中断中の義雄さんは、妻へのお詫びとして「豪華客船ツアー」のパンフレットをあちこちから取り寄せているらしい。

取材・文/清水芽々

清水芽々(しみず・めめ)

1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。