おぞましき貸家トラブルを描いた映画『バーン・クルア 凶愛の家』は背筋も凍るタイ発の戦慄ホラー【LiLiCoオススメ肉食シネマ 第299回】

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お仕事お疲れさまです。今回は、この連載で初! タイの家系ホラーです。

皆さんの中にも経験あるかもしれない、人への貸家。いくつかの所有物件を人に貸して家賃収入。憧れます!

でも、経済的な理由から住んでいた家を元医師に貸し出し、一家はマンションに引っ越し…と、これは、ちょっとツラい状況。

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しかも、借りた人たちが変だったらなおさら気分悪い。このタイから来たサスペンスホラーを見たら、考えてしまうかもしれません。

夫のクウィン、一人娘インと暮らすニン。一軒家を貸しますが、すぐに何かが怪しいことに気づくニン。転送届けの前に自分宛に届いた郵便物を取りに行ったら封筒が開けてあったり、仲が良かった隣人の様子がおかしかったり…。

私が一番ゾッとしたのは夫のクウィンの様子。一番信頼しているはずの夫がすごく変! 心ここにあらず、行動も奇妙で、深夜のアラーム、出掛ける準備、それを覗くニン。うっかり音を出してしまうニンがもう一度夫を見ると、何もなかったかのように、またソファで寝てる(フリ)。

そして可愛い娘インまでが変わっていく…。間違いなく今年で一番ビビった映画です。

この家系ホラーには、サスペンスに加え、何とも言えない切ない人間ドラマがあって、登場人物に感情移入すると心がギュっと痛くなります。

タイでは3週連続ナンバーワン

本国タイで同時期に公開された『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』や『ジョン・ウィック:コンセクエンス』といったハリウッド大作を押しのけ、3週連続でナンバーワン。監督のソーポン・サクダピシットは『心霊写真』『カミング・スーン』など、今までたくさんのホラー作品を作ってきました。

『心霊写真』はアメリカでもリメイクされています。

また、2011年にタイで公開された『ラッダーランド/呪われたマイホーム』は、タイ版のアカデミー賞といわれる「スパンナホン賞」で作品賞を含む6部門を受賞しました。

今回も後味はかなり強烈で、切ない気持ちにもなりますが、もう一歩深くこの結末を考えると、めっちゃくちゃ怖い! しかも、実話にインスパイアされた物語でさらに怖い!

話はかなり入り組んでますが、難しくないし、脚本はしっかりと練られてます。

タイのウェットな空気感も手伝って不気味さが増します。

暑い夏は終わりましたが、肌寒い風とともにゾッとしましょう!

バーン・クルア 凶愛の家
監督:ソーポン・サクダピシット
出演:ニター・ジラヤンユン、スコラワット・カナロット、ペンパック・シリクン
配給:ギークピクチュアズ 11月22日(金)より、シネマート新宿ほかにて全国公開

幼い娘を育てるニン(ニター・ジラヤンユン)とクウィン(スコラワット・カナロット)は、経済的理由からマンションに引っ越し、今まで住んでいた家を元医師のラトリー(ペンパック・シリクン)とその娘・ヌッチに貸し出すことに。その後、次第にクウィンが奇妙な行動を取り始めたことに気づいたニンは、夫がヌッチと同じデザインのタトゥーを入れていることに気づく。実は、ラトリー親子はカルト集団のメンバーで、彼らによってクウィンが集団に引き入れられてしまったことが分かり…。

「週刊実話」11月28日号より

LiLiCo(リリコ)

映画コメンテーター。ストックホルム出身、スウェーデン人の父と日本人の母を持つ。18歳で来日、1989年から芸能活動をスタート。TBS『王様のブランチ』、CX『ノンストップ』などにレギュラー出演。ほかにもラジオ、トークショー、声優などマルチに活躍中。