「ドール業界の大谷翔平になりたい」“新生オリエント工業”社長・岡本祐也氏に世界最速インタビュー

「先代は本当にお客様のことを考えている」

オリエント工業ショールームで撮影
―まさに劇的な復活でした。先代は何か仰っていましたか?

「とにかく『社員の雇用を継続してくれ』と念押しされました。あとは、商品のこだわりとして『開発に力を入れた特別なシリコンも継続して使ってほしい』とも言われています」
お土産としていただいたポストカードとシリコンのサンプル
―“里帰り”(ラブドールが不要になった際にオリエント工業へ郵送すること)も継続して行うということですよね?

「もちろん“里帰り”も継続して行っていきます。誇張するワケではなく、先代は本当にお客様のことを考えていて『クレームがくるんじゃないか』『怒られるんじゃないか』と心配していましたね」

―新生オリエント工業はどのような戦略をとっていくのでしょうか?

「現在の事業を継続していくことが最優先です。それとプラスして、福祉の方面に力を入れていこうと考えています。介護用として高齢者の傍に置いて、安らぎを与えたり。あとは、やはりAIやロボットといった分野への進出も考えています」

―現在、安価でクオリティが高い海外のラブドールが人気ですが、どのようにお考えでしょうか?

「いま中国メーカーが市場を席捲していて、正直、クオリティが追い越されている部分もあります。中国メーカーは3Dプリンターや3Dスキャナーを使って、1カ月で新しい商品の型をつくっています。私は中国にもネットワークがあるので、3D技術提供を受けながらやっていきたいですね」

―そんな中で、中国メーカーに比べてオリエント工業の強みはどのようなところにあるのでしょうか?

「やっぱり表情が深いんですよね。何度も塗り重ねていて。中国メーカーの製品は顔のメイクがすぐ取れちゃうんですよね。オリエント工業の製品は何十年と表情が変わらないんです」
オリエント工業ショールームで撮影
―職人さんの技術の賜物ですね。今後の展望を教えてください。 

「2027年にオリエント工業が創業50周年を迎えるので、アメリカやフランスなど、海外で展示会や記念の催しを開こうと企画しています。あと、社内でも言っているのですが、10年、20年働いてきた社員さんたちの給与を、50周年までに1.5倍にしたいです」 

―技術を継承しつつ、新しい分野へ挑戦していくということですね。 

「あと現在、私は給与ゼロでやってます。経費も自腹を切っていて、収益が安定するまでは給与ゼロでやっていきます。それほどの覚悟があると知っていただきたいです」