1年たつのが早いと感じる大人たちに送る 人生を「こなす」のではなく「味わう」ための解説書

『あっという間に人は死ぬから「時間を食べつくすモンスター」の正体と倒し方』佐藤舞
◆『あっという間に人は死ぬから「時間を食べつくすモンスター」の正体と倒し方』KADOKAWA/1600円(本体価格)

――時間の浪費をテーマにしたきっかけは何だったのですか?

佐藤「「『あべこべに生きているな』と感じたことです。例えば、お金をもうけるために長時間労働やストレスフルな仕事をして自分の健康を犠牲にし、挙げ句、傷ついた健康を取り戻すために、高額なサプリやジムなどにお金を使っているのって、なんだかあべこべじゃないかと。それって自分の人生を生きていないと感じました。人生を『こなす』のではなく『味わう』にはどうしたらいいのか、ということについては体系化されていなかったので、本書を執筆しました」

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――どうして我々はついつい時間を浪費してしまうのでしょうか?

佐藤「人は本能的に『死・孤独・責任』という人生の3つの理を避けるために行動をし、その行動を正当化することに時間を使っているというのが本書の主張です。例えば、病や死は誰にでも訪れるものですが、『いずれ死ぬ』と頭では分かっていても、どこか他人事と思いがちです。『時間ができたらやります』などと先送りをした結果、『もっと早く決断して行動しておけばよかった』となる。これが人生の浪費です」

人生の優先順位と価値観を洗い出す

――人生を有意義に過ごすためには何から始めたらよいのでしょうか?

佐藤「自分の本心、つまり価値観と言動や振る舞いに一貫性があることです。まず、“自分は人生で何を大切に生きたいのかが分かっている”という人生の優先順位が必要です。本書では自分の価値観を洗い出したり、それに沿った目標設定をしたりして定期的に見直す、ということを推奨しています。私は週に1回、5年間毎週続けて計260回以上目標設定をして本当に人生が変わりました」

――目標を定期的に入れ替えてもいいのですか?

佐藤「最新の心理学研究では、目標達成力より軌道修正力の方が大事なのではないか、という論文も増えています。『立てた目標は絶対に達成すべきものだ』という考えは手放してください。本書では軽やかだけども抜群に効果がある目標設定のやり方として、『目的―目標―手段』で目標設定する方法を推奨しています。最初の目的は自分の価値観で、次の目標はそこに到達したと分かるゴールです。最後は、目標を達成するための手段です。この三つを一貫させていくように軌道修正していきます。このように、目標設定して行動し、振り返りをする過程で、自分がどんな人間なのかが分かってきます。こうして自分の取扱説明書が作られていくのです」

聞き手/程原ケン

「週刊実話」11月21日号より

佐藤舞(さとう・まい)

データ分析・活用コンサルタント。登録者38万超のYouTubeチャンネル『謎解き統計学 サトマイ』運営。桜花学園大学客員教授。「確率・統計を使い、知的かつ面白く、世の中の謎を解く」をコンセプトに情報発信。