オシドリ夫婦を崩壊させたサイコパス家政婦の“あり得ない言い分”~ブラックリスト入り確実な家政婦たち(3)~



「おめでたい夫婦の仲をぶちこわしたい…」

A子とグルであったと思われるホストたちは、下戸だった晴美さんに「ノンアルコールカクテル」だと嘘をついて何杯も酒を飲ませて酔いつぶした。

そして、店の上にあるホストの私室に連れ込んだ。

「その時の私はかろうじて意識はあるけれど、身体の自由がきかない状態でした。そんな私を1人のホストが暴行し、別のホストがその現場を写真に撮っていたのです」

後日、その写真は将司さんのもとへ届けられた。

「差出人不明でしたが、A子の仕業としか考えられなかったし、彼女もそれを認めました。私がA子に『なぜこんなことをしたのか?』と聞くと、『私はアンタみたいな世間知らずのぶりっこが大嫌いだし、そんなアンタにべた惚れなダンナも気持ち悪くて仕方なかった。このおめでたい夫婦の仲をぶちこわしたら楽しいだろうなと思った』と暴言を吐きました。すぐに解雇したいところでしたが、事情を知らない義両親の手前、それはできません。当然夫には一部始終を説明しました。夫は被害者である私を慰めてはくれましたが、他の男性と関係を持ったという既成事実がどうしても耐え難かったようで、どんどん精神的に不安定になって行きました」

A子と顔を合わせたくなかった晴美さん夫婦は適当な理由をつけてホテル暮らしを始めるが、必要最低限の会話しかなく、同じベッドで眠ることもしなくなった。

二人の間にできた溝は思いのほか深かったのである。

「離婚という最悪の結果は逃れたものの、苦悩が続いた夫は鬱病になってしまいました」

その結果、将司さんの会社は事実上倒産する。

「経済的基盤がなくなったことを理由にA子を解雇することができたのは不幸中の幸いでしたし、今は私の実家が援助してくれていますが、夫婦関係を含め、この先どうやって生活を立て直そうかと途方に暮れるばかりです」

何の非もないはずの人間に向けた、理不尽な悪意で幸せな家庭を破滅に追いやったA子。ちなみに、彼女は40代半ばで生まれは大阪。酒焼けしたダミ声でやたらと愛想がいい家政婦だったという。

取材・文/清水芽々

清水芽々(しみず・めめ)

1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。