対外純資産世界一! なのに恩恵を感じられない不可解すぎる日本経済の解説書

『日本経済 本当はどうなってる?』岩本さゆみ
◆『日本経済 本当はどうなってる?』青春出版社 / 1050円(本体価格)

――共著者の生島さんのラジオ番組『生島ヒロシのおはよう定食 一直線』(TBSラジオ)の出演コーナーが人気です。知り合ったきっかけは?

岩本「別のラジオ番組でのトークを偶然、生島氏が聴いていたのがきっかけです。金融や経済というと、高名な先生方が大所高所から語るのに対して、私自身は町のお好み焼き屋を経営する夫を持つ、子育て中の主婦でもありますので、庶民的なエッセンスを盛り込んで、簡単な言葉で話していたのが新鮮だったようです」

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――米FRBが大幅利下げを発表しました。物価高、円安に終わりは来るのでしょうか?

岩本「大幅利下げと同日に、ドットプロット(FRBのメンバー19人による今後の政策金利予想)も公表され、政策金利は年内0.5%へ、25年末までにさらに1%、26年以降も引き下げの見通しとなり、前回6月時点の予想から下方修正もされています。この数年は日米金利差が着目され、ドル高・円安となってきたわけですから、それが解消の方向に動きだしたということは、円安のピークは過ぎ、円高の局面に入っていると考えています」

長期保有の実物資産に「金」は有効

――石破茂新政権が発足しました。消費税減税は期待できますか? 

岩本「消費税の減税の話は一切出ていませんので、期待薄ですね。自民党総裁候補者から、内部留保課税の話が出ていましたが、導入しても株主への配当金が増加しただけで、賃金にも設備投資にも回らなかったのは韓国で実証済みです。また、リスキリング(新しい知識の学び直し)が語られていましたが、そもそもリスキリングは企業が自社の従業員のスキルアップを目指すためのもので、転職を後押しするものではないはずです。サービス残業なども含めて、労働に対する正当な対価への意識がもともと希薄な中で、雇用流動化だけをことさら取り上げるのはどうなのか。個別の提案についても現実的な効果を発揮する政策なのか、1つずつ丁寧に評価する必要があるのではないでしょうか」

――新NISAなど老後の資金問題に注目が集まっています。岩本さんオススメの投資先を教えて下さい。

岩本「以前、インゴットを作っているスイスの精錬工場のCEOとお話をしたときに、個人として理想のポートフォリオを考えるなら、自分の体重と同じ分量の『金』を持つべきと言われました。体重相当は非現実的としても、今後円高が進めば、少し金価格が割安になるときもあると思います。実物資産としての「金」というのは長期的にみても有効ではないでしょうか」

聞き手/程原ケン

「週刊実話」11月7・14日号

岩本さゆみ(いわもと・さゆみ)

経済評論家・金融コンサルタント・大阪経済大学理事。東京女子大学卒業、青山学院大学大学院修了。日本・アメリカ・カナダ・オーストラリアの金融機関にてバイス・プレジデントとして国際金融取引に従事。