不老不死かアンチエイジングの極みか!? 北関東に実在した「トシを取らない男性」の不気味な実像



住民との交流も必要最低限

地域の人たちは不思議に思ったり不気味に感じたりしないのだろうか?

「40年間まったく変化がなかったらヘンに思うんでしょうけど、動きとかは年齢を感じさせる部分もあるので、それほど異常だとは思っていないみたいです。しょっちゅう見かけているせいもあって、時間の経過を実感できていないというのもあるのかも知れません。…というか、川田さんはもともと得体のしれない人だったんですよ」

40年前、この地域に単身で住み始めたという川田氏は、引っ越して来た当初に「施設育ち」であることをふと漏らしたことがあり、複雑な生い立ちを察した住民たちはあえて身の上を聞こうとせず、川田氏もプライベートな話はしなかったという。

「この40年間、誰も川田さんの身内とか友人とか恋人とかを見たことがありません。住民との交流も必要最低限という感じです」

川田氏は清掃業で身を立てているという話だが、それすらも自称であり、働いているところを見た住民はひとりもいないという。

「不定期な仕事みたいで、家を空ける時間はまちまちですね。所有している軽のバンにはほうきとかバケツが積んであるのが見えるので、清掃業というのもあながちウソではないと思うんですが、どこで作業をしているのか誰も知りません。『まさか犯罪に関わってるわけじゃないだろうし、誰にも迷惑をかけてないのだから放っておいてあげよう』みたいな感じです。トシをとらない見た目もひっくるめて、そういうもんだと思っているみたいです」

A子さんの住む地域はどちらかと言えば閉鎖的な場所だが、40年という歳月が、不可解さも含め川田氏の存在を受け入れたということだろうか。

取材・文/清水芽々

清水芽々(しみず・めめ)

1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。