「最も高い部屋で5億円台もあります」死に場所までステータス化する金満老人の“終の棲家”を徹底ルポ

『ルポ 超高級老人ホーム』甚野博則
◆『ルポ 超高級老人ホーム』ダイヤモンド社/1600円(本体価格)   

――超高級老人ホームにはどんな人たちが住んでいるのでしょうか?

甚野「超高級老人ホームに入居している方の多くは、中小企業のオーナー経営者や有名企業の元役員が中心です。他にも元大学教授や医師、弁護士、弁理士、俳優など、その世界で成功し富を築いた人たちが多いです。
年齢は施設によって異なりますが、私が取材した超高級老人ホームでは、70代中盤以降の方が多かったという印象です。男女比は平均寿命の関係から、どこの施設も圧倒的に女性が多いです。最初は夫婦で入居したものの、夫と死別したというケースも多々あります」

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――入居金、月々の費用はどのくらいかかるのでしょうか? 

甚野「入居一時金は施設によって異なりますが、1億円超えは珍しくなく、最も高い部屋で5億円台というのもあります。都内であれば、100平米を超えた部屋では3億円から4億円の施設も。
月額費用も高いところでは60万円を超えることもありました。食事は外部業者に委託している施設もあれば、運営会社がレストランを経営しているケースもあります。最近では帝国ホテルのダイニングサービスをウリにしている施設もありますね」

ラブホテルのような内装の施設も…

――居住者同士、あるいは職員とのトラブルなどはあるのでしょうか?

甚野「超高級老人ホームといえども、一つ屋根の下で共同生活を送るわけですから、トラブルは数え切れません。細かい例では、レストランでの席をめぐるトラブルや、風呂場で後ろの人のシャワーの水がかかったと小競り合いになることもあるそうです。中には職員が半強制的にレクリエーションに連れて行っているという告発もありました」

――悪徳施設へ潜入取材を行っていますね。どのような実態が明らかになったのでしょうか?

甚野「何者かによって2度も爆破予告があった施設は、その事実を入居者や多くのスタッフに隠していました。カビだらけの調味料を使っていたと告白した元職員もいます。実際に施設に潜入した際は、まるでラブホテルのような内装に驚きました。また、中には反社会的勢力が運営に関わっているという話も耳にしましたね。
この施設はパンフレットに記載された入居金より1000万円以上高い見積もりを提示されました。超高級老人ホームと聞くと、高額な入居一時金や豪華な設備、調度品ばかりに目が行きがちですが、そのことは決して『終の棲家』としてふさわしい場所というわけではありません」

聞き手/程原ケン

 「週刊実話」10月17日号より

甚野博則(じんの・ひろのり)

1973年生まれ。大学卒業後、大手電機メーカーや出版社などを経て2006年から『週刊文春』記者に。2017年の「『甘利明大臣事務所に賄賂1200万円を渡した』実名告発」などの記事で「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」のスクープ賞を2度受賞。