森永卓郎「高市氏が決選投票に進めなかったら日本経済が終わってしまう」デフレ下の引き締め政策に警告

このままでは恐慌が起こる可能性も

そうなると企業も戦略を変えざるを得ない。セブン-イレブン・ジャパンは9月3日から、「うれしい値!」ブランドで手ごろな価格を打ち出す商品を270品目に増やすと発表した。

セブン-イレブンは、上質な原料を使った『セブンプレミアム ゴールド』などの高価格帯の商品で成功を収めてきたが、今年に入って売れ行きの前年割れが目立ってきた。

このままだと、日本経済は、確実にデフレに逆戻りする。それが見えているのに政府は緊縮財政に向かい、日銀は金融引き締めという逆噴射をしようとしている。デフレのなかで引き締め政策を採ったら、景気低迷では済まない。恐慌状態に陥る可能性が高いのだ。

1929年、アメリカのバブル崩壊で、世界は深刻なデフレに向かっていった。ところが総理大臣に就任した濱口雄幸は、グローバルスタンダードへの追従を掲げ、「国民諸君と共にこの一時の苦痛をしのんで」と言って、旧平価(金輸出禁止前の相場)での金解禁という強烈な金融引き締めと厳しい財政緊縮に打って出た。

その結果、日本は昭和恐慌に突入した。農家で娘の身売りが頻発し、4人に1人が失業者となってしまったのだ。

こうした歴史があるにもかかわらず、自民党の総裁選挙でも、立憲民主党の代表選挙でも、出てくる政策は、財政と金融の緊縮策ばかりだ。

唯一の希望は、高市早苗氏が「プライマリーバランス黒字化にこだわるべきでない」と、積極財政への転換を示唆していることだが、それでも消費税減税などの強い景気対策を打ち出しているわけではない。

ただ、高市氏が総裁選の決選投票に進めなかったら、その時点で日本経済が終わってしまうことは、間違いないだろう。

「週刊実話」10月10日号より