
「数字を見る限り、もう少し運動をしたほうがいいですね。あと、不規則なドカ食いもやめたほうがイイです。運動すると息切れするんですか? じゃあタバコを少し控えましょうね」
つい先だって健康診断を受けた際、最後の対面診断をご担当いただいた妙齢の女医さんから、こんなご指摘をいただきました。
「アナタのような方に24時間管理していただければ…」
そんな冗談(半分本気!)が口をついて出そうになるところをグッと抑えて、具体的な対策を尋ねると、「まずはもっと歩きましょう。階段を選んで上り下りするのもイイですよ」と明るく返されました。嗚呼…。
タバコは減らせないし、階段を使うのなんてもっとイヤ。食事だって…。
「ならば、せめて釣りに行くときくらいは歩くか。せっかくなら磯に行こう!」
しばしの思案の末にこんな安易なことを思い立ち、磯釣りを愛好する釣友に誘いを持ちかけました。
うららかな晴天に恵まれた週末、釣友と出かけたのは伊豆半島南端の下田。良質の温泉はもとより、ペリー提督率いる黒船によって開国がなされた地として有名な観光地であります。

奥深い湾内は波が穏やかで釣りのポイントも多いのですが、釣友がチョイスしたのは道路脇の小磯。道路からサッと入れるうえに起伏もあまりなさそう。これはラクに竿が出せそうです。…ってコレじゃいかんのか。
仕掛けを動かしてエサの存在をアピール
釣友はクロダイ狙いのウキ釣り、ワタクシは「掛かるもの拒まず!」のブッコミスタイルで沖に向かって遠投します。ひとしきり準備を終えたら腰を下ろし、あとは魚が掛かるのを待つのみ。初めて竿を出す場所ならではの〝手探り感〟は、オッサンになってもタマランものがあります。
んが、いくら待っても反応はなく、エサに付けたイソメもサバの切り身も一切かじられません。この釣りは仕掛けを投じてしまったらやることがありませんから、次第に眠気に抗えなくなってやがてzzz…。
「ミツハシさ~ん。お土産によさそうな魚が掛かったよ~」
キモチよく寝てるところで起こしやがって…などと思いつつ近づくと、立派なカワハギがハリに掛かっておりました。コレはいいですなぁ♪

カワハギは投げ釣りでもしばしば掛かりますから、この釣果を見て意欲が再燃。口が小さく〝エサ取り名人〟とも評される魚ゆえ、ハリが小さい専用の仕掛けに結び替えます。それまでは、投入後に一定時間ほったらかしていましたが、竿を手に持ったまま定期的に仕掛けを動かしてエサの存在をアピールします。
日が高くなって水温が上昇したのか、定番外道のベラがポツポツと掛かります。明らかに状況はよくなっていますが、本命は一向に掛かりません。
レンジで簡単! 極上酒蒸しに
「またオマエ(ベラ)か…」
そんなガッカリをひたすら繰り返し、やがてエサが尽きてしまいました。結局、ずっと仕掛けを動かしていたので腕の運動にはなったものの、下半身はほとんど動かさず…。まあ、竿を持つ時間が長かったおかげで、タバコの数が減ったからヨシとしましょう。
釣友が釣ったカワハギはその場で血抜きをして、ワタクシのクーラーボックスヘ。釣友はクロダイが釣れなかった悔しさで、コイツの存在をすっかり忘れていたので、晩酌の肴としてありがたく頂戴しました。
カワハギの調理法といえば肝和えや刺身がポピュラーですが、今回釣れた個体は肝が小さかったため、シンプルな酒蒸しでいただきます。

下処理したカワハギを昆布を敷いた皿の上に乗せ、そこに日本酒を回しかけたらラップを被せてレンジでチン♪ あっという間に晩酌開始です。骨からホロリと外れた身をポン酢にひたしてパクリ。淡白ながらも繊細な旨味が感じられ、噛むほどに味わいが深まる大人の味です。冷酒をグイと飲み干しつつ、白身を噛み締める夜…。箸が進んで、あっという間に完食となりました。
思い返せば下半身を動かすべく磯に出かけたのに、使ったのは上半身ばかりという、実に本末転倒な1日でありました。
今度はしっかり下半身を使った釣りをしようと思いま~す。
三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。