美容室の倒産件数が過去最多を更新する見通し 市場縮小にもかかわらず美容師が増える“悪循環”

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9月3日に帝国データバンクが「美容室の倒産動向2024年1〜8月」を発表し、美容室の淘汰が加速していることが明らかになった。

今年、発生した美容業(美容室)の倒産は、8月までに139件、2023年の同期間に比べて約1.5倍、年間で最多だった2019年(166件)を大きく上回る勢いで推移している。

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「このペースでいくと、通年の倒産件数は過去最多を大幅に更新し、初めて年間200件台に達する勢いです。新規の開店が増えたことによる店舗間競争の激化に加え、円安や原材料高の影響でシャンプーをはじめとした美容資材が高騰、スタイリストなどの人件費の上昇が背景にある」(経済アナリスト)

このような状況に、単純な値上げで対処できないのが最近の美容業界。値上げをしても利益が「不変・減少」となったケースが8割を占める(日本政策金融公庫調べ)など、施術費用の引き上げが難航し、不安定な経営が続いている美容室も少なくないという。

少子化にもかかわらず過当競争も激化

2023年度における美容室の業績を見ると、損益面で「赤字」となった企業が4割を占めているのも業界全体の苦境を物語っている。

「物価高による節約志向もあってか、女性のヘアスタイルで洗髪しやすいショートカット系が流行していて、支出額ベースではカットに比べてパーマの減少傾向がみられる」(同)

一方で、現在も美容師を目指す人は増加傾向にある。2022年度の厚生労働省「衛生行政報告例」によると、美容室と美容師はいずれも過去10年で最大の増加幅だ。

しかし、裏を返せば少子高齢化で市場が縮小しているにもかかわらず、美容師が増えるという悪循環。カリスマ美容師ブームなど、かつて美容業界は世間を席巻したが、昨今の業界を襲う難局を乗り越えるのは少々難しそうだ。