可憐すぎる“トランス男子学生”がトラブルの原因に トイレも風呂も共同の男子寮で巻き起こった「2つの暴行事件」

退寮間際に思いを寄せる男子寮性が夜這い

やがて大学側もこの状況を看過できなくなり、Aに対して退寮を求めることになった。

「とはいえ、女子寮に入れるわけにも行かないし、苦学生のAに民間のアパートを借りる経済力もなかったので、大学側が職員用に借り上げている物件に特別に移り住むことになりました」

Aが男子寮を出て行くことが決定したある日、Aの部屋にBという寮生が夜這いをかけるという事件が起こる。

「聞くところによるとBは以前からAに(女性として)好意を抱いており、Aが離れてしまう前に思いを遂げようとしたみたいです」

この事件はすぐに大学側の知るところとなり「暴行事件」として処理されたという。ただ、その際に処分が下されたのは、AとB双方だったとか。

「Aを襲おうとしたBは当然として、実はAが抵抗のあまり、Bに対して殴る蹴るの暴行を働いたのです。それでBは骨折などの重傷を負いました。Aは正当防衛を主張しましたが、明らかに過剰防衛ですし、そもそもAの自認は男性なので、通常の『女性が被害者である性加害』事件と同じには扱えないという見方もありました」

結果は両成敗ということに。「Bのケガの治療費はAに対する精神的な慰謝料と相殺することになりました。夜這いが未遂か既遂かは微妙だったようですが、どうにか和解に落ち着いた感じです」

前代未聞の暴行事件。大学側はBに対しては「退寮処分」を下したが、Aに対してはお咎めなしだったという。また、Aは事件後も変わらずに「トランス男性」として生活しているようだ。

取材・文/清水芽々

清水芽々(しみず・めめ)

1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。