焼肉ライクが閉店ラッシュで経営危機?「1人焼肉」を広めた王者も円安による仕入れコスト増に勝てず

焼肉ライク (C)週刊実話Web
新元号が令和になると発表された2019年4月1日、時同じくして誕生した焼肉チェーン・焼肉ライクが相次いで閉店している。

「ライクは焼肉チェーン最大手である牛角の創業者が立ち上げた1人焼肉チェーン。これまで1人では行きづらかった焼肉を“1人焼肉”という形で提供し、宴会や食事ではなくファストフード的な位置付けにすることで、大きな人気を集めました。特に、創業翌年のコロナ禍により、換気のいい焼肉屋や1人での食事需要が増したことで、急拡大しました」(フードアナリスト)

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ところが、この1年ほどのライクは急速に勢いを失っている。昨年9月15日、東京都の赤坂見附店・恵比寿店が同時に閉店。10月9日には吉祥寺南口店も閉店し、地方では26日に宮城県の仙台広瀬通店が閉店した。 

翌11月15日には初のドライブスルーを導入した相模原若松店、12月17日に町田北口店と、首都圏を中心に続々と閉店していく。 

この流れは年明けも止まらず、3月31日に八王子楢原店、7月31日には千葉県の津田沼店が閉店した。今月末にも、同じく千葉県の松戸南花島店が閉店する。 

「ライクが1人焼肉を広めて以降、大手居酒屋チェーン・ワタミグループが展開する『焼肉の和民』など、業界に企業が続々と参入してきました。市場を独占できなくなったことも、経営不振の大きな要因でしょう」(同) 

円安による牛肉の仕入れコスト増大で経営を圧迫 

一方、焼肉店の苦境はライクだけに限らない。 

「帝国データバンクによると、焼肉店の倒産は2024年1〜6月で20件。これは前年同期比の約2.5倍という数値であり、通年で過去最多だった2019年を上回るペースです」(同) 

この背景の大きな要因として指摘されているのが、異次元の円安による牛肉仕入れコストの増大だ。

「ドル円相場は一時160円台をつけました。実質実効為替レートは過去最低で、なんと1970年代前半よりも低い水準です。当時の日本はまだまだ海外に追いつけ追い越せの時代で、海外旅行や輸入ステーキは高嶺の花でした。現代ニッポンはこの時代よりも円が弱いということになります」(金融ストラテジスト) 

安価な焼肉チェーン店では、当然ながら安い輸入食材に頼らざるを得ない。 その食材の仕入れコストが増大すれば、経営を圧迫することは当然だ。 

「農畜産業振興機構によると、US冷凍ビーフバラ肉の国内卸値は、5月のデータで前年同月比6割も高くなっている。これは1993年の統計開始以来、過去最高です。そのうえ、光熱費や最低賃金も値上げしており、焼肉店は値上げなしに経営できない。一方、消費者は値上げラッシュによる実質賃金の低下で財布の紐が堅くなり、より安価な牛丼チェーンなどに客が逃げています」(前出・フードアナリスト) 

数年前、高級食パンやから揚げ店が続々と開店したが、ここ最近は相次いで閉店している。1人焼肉も同じ道を辿ってしまうのだろうか。