日本版キャストはアンミカかLiLiCoが適任? 痛快ボリウッド映画『ポライト・ソサエティ』は「まさに、ザ・単純明快」【やくみつるのシネマ小言主義 第261回】

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つまらないとか、つまらなくないとか、そういう問題じゃなく、一言で言うとこんなに分かりやすい話はない。まさに、ザ・単純明快映画です。

何も迷うこともないし、謎解きで途中混乱が生じることもありません。今年はみんな夏バテで、誰も小難しいことを思索する気なんてなれませんからね。涼しい映画館で、カンフー、ワイヤーアクション、ボリウッドなどの異素材をぶっ込み、娯楽に徹した奇天烈なストーリーを何も考えずに楽しむにはお勧めです。

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物語の舞台は現代のロンドン。その中でもパキスタン系コミュニティー内の上流社会の話なため、民族衣装も豪華なら、瀟洒な館での夜会が催されるなど、インド映画を見ている気になってしまいます。

インドとパキスタンは宗教上の対立から分裂し、長年難しい状況にあるものの、元を辿れば一つの国。こちとら日本人なため見分けがつきません。しかも、保守的なムスリム家庭という設定なのに、登場する女性たちが誰1人、顔や体を布で隠すことがないのも謎。どう見てもヒンドゥー教徒の描き方で、宣伝側が混同しているのではと心配に…。

日本版を作るならLiLiCoが最適?

さて、主人公リアは、ロンドンで育った自由奔放な女子高生。将来の夢はカンフーのスタントウーマンになること。学校でも浮いていて、唯一の理解者は、画家志望の姉リーナだけ。

ある日、母の勧めで出掛けた夜会は、ある富豪が息子の結婚相手を選ぶ目的だった。息子に色目を使う女性たちの中から、なぜか姉が選ばれ、結婚して海外移住することに。あまりの急展開にうさん臭いものを感じたリアが、姉を救出するため立ち上がります。

リア1人で戦うのではなく、冴えない同士のクラスメートと3人組になって挑むところは話が膨らむ要素になっていると思いますね。

映画のチラシには「スクールカースト、家父長制、ルッキズムなどの社会の足かせに立ち向かう新たなヒーロー」とぶち上げていますが、そこまで深読みする必要はない。お約束のボリウッドダンスやアクションを気楽にお楽しみいただければと思います。

アクションといえば、主人公が格闘する相手は、なんと姉の結婚相手の母親。ゴージャスかつ独特な風貌で、カンフーもなぜか達人風です。こういう濃い人物を見ると、日本版を作るなら誰をキャスティングするかと妄想してしまいますが、自分としてはアンミカかなと。いや、最近、女優としても評判の高いLiLiCoさんという案も…。

ポライト・ソサエティ
監督・脚本:ニダ・マンズール
出演:プリヤ・カンサラ、リトゥ・アリヤ
配給:トランスフォーマー
8月23日(金)新宿ピカデリー、グランドシネマサンシャイン 池袋、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー

ロンドンに生まれた高校生リア・カーン(プリヤ・カンサラ)はスタントウーマンを目指してカンフーの修行に励んでいるが、学校では変人扱いされ、両親からも将来を心配されていた。そんな彼女の唯一の理解者は、芸術家志望の姉リーナ(リトゥ・アリヤ)。ある日、リーナが富豪の息子であるプレイボーイと恋に落ち、結婚して海外へ移住することに。彼の一族に不信感を抱いたリアが独自に調査を進めると、結婚の裏には驚くべき陰謀が隠されていた。

やくみつる

漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。