20代OLが海外企業CEOの“生贄”に…芸能界以外にも蔓延る「卑劣な枕営業」の実態

「犯罪ではないよ。これは取引だ」

「周りを気にせずにゆっくり食事がしたいから、ルームサービスを頼んだ」と言われ、高層ビル街の夜景を眺めながらCEOと二人きりで食事をした結衣さん。

「1日一緒にいて、だいぶ打ち解けた感じになっていたので食事自体は楽しかったのですが、デザートが終わって珈琲を飲んでいたら突然、彼が『お楽しみはこれからだ』と言って私を抱き締めて来たんです」

必死に抵抗した結衣さんだったが、大柄で格闘技の経験もあるというCEOの力にはかなわない。

「CEOは私をベッドに押し倒すと、荒々しい手つきで着物を開いて、のしかかってきました」

「やめてください! これは犯罪ですよ!」

結衣さんがそう叫ぶとCEOは「犯罪ではないよ。これはビジネスだ。取引なんだよ」と平然と答えたという。

「そういうことか、と思いました。今日1日で彼が黒髪のロングヘア、黒い瞳、小柄、色白という、いわゆるヤマトナデシコが好みだということが分かっていましたので、私は“枕営業要員”だったんだなって…」

すべてを察したところで、こうなってはあとの祭り…。コトが終わり、すっかり満足したCEOはバスルームへと消えて行ったそうだ。

「『素晴らしかった』とか『キミの愛社精神には敬意を表する』みたいなことを言われました。着崩れした和服は一度すべて脱いで着付けをし直さないとならないのですが、私くらいの年代で自分で着付けができる人は滅多にいません。ただ、私は学生時代に着付けを習っていて、特技として入社の際の履歴書にも書いたことを思い出しました。『それもすべて計算済みか…』と思ったら、あまりの用意周到さに呆れてモノが言えませんでしたね」

翌々日、出社した結衣さんは社長に「完璧に任務を遂行してくれて感謝している」と労われ、臨時ボーナスとして100万円が口座に振り込まれた。

「大金ですが、私の身体だけでなく尊厳まで踏みにじられたことを思えば、いくらもらっても足りないくらいです」

その後、プロジェクトが大詰めになり、A社との正式契約が交わされる直前に結衣さんは会社を辞めたという。

「実はCEOからメールがあり『今後もキミが私をアテンドしてくれることが契約の条件に含まれている』と言われたからです。私への好意とユーモアを含んだ言い方でしたが、私にその意思はありませんし、プロジェクトがどうなろうと知ったことではないので…」

結衣さんが退職して間もなく1年になろうとしているが、結衣さんの会社がA社と業務提携をしたという話はいまだに聞こえてこないそうだ。

取材・文/清水芽々

清水芽々(しみず・めめ)

1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。「壮絶ルポ 狙われるシングルマザー」(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。